自分しか信じない。

何もしないと寄ってくるくせに此方が踏み出せば逃げていき、光を求めるように近づいたとしても決して中には入らず、温もりを恋しいと思っても優しさと他人に触れられることを極端に嫌う。

例えるならそれは。

捨て置かれた猫。



.猫を拾う.







それは。

「シェゾくん」

不意に掴んだ細い肩(栄養がうまく採れているのかと思わせる肩だ)がビクリと、必要以上に震えるものだからその事に気付いたのだと思う。(以前から薄々感付いていたことだけれど)彼は、他人に触れられることを極端に嫌う。

(何が、そんなに?)

相手に踏み込まれること、他人という存在に中に入られること、自分の中に他人を感じること。

そして自分を他人に知られること。

人より多い知恵と知識でその事に気付いたルシファーは、だからこそ気付かなかった振りをしてみたけれど。

「……離せ」

それとは分からない震えを声に忍ばせて、噛みつくように空気を奮わせたシェゾには、もう感付かれていただろう。

「嫌だ、と、言ったら?」

握った肩からじんわりと彼の体温が、伝わる。気付けば掌に込めた力が強くなっていることに気付いて、少し力を抜くと同時に腕を引いた。
自然、向き合う形になるシェゾの体が案の定。骨張って儚いから顔をしかめる。

嗚呼また、録な食事を摂取していないことが容易に読み取れる躰だ。しかし彼はギリギリまで酷使して限界になってようやく、他人を求めるから仕方のないものである。

しかも求めかたがまた乱暴で、助けを乞いたりはしない。文字通り奪いに来るのだから。
(それは、まるで人の家に無断で入り込む野良猫)

(何故そんなに)
(人に嫌われたがるのか)

ルシファーは嘆息をひとつ。さて、どうしたものか。まったく扱いにくいことこの上ない人だ。そもそもシェゾ自身が己を扱いかねているから始末に終えない。

優しくされたいのか。
それとも。

「恐いのかい?」
「……っ、何が!!」

言えば反射的に腕を払われた。しまった直球すぎたかと思ったのは後の祭り。彼は2、3歩確実に遠ざかる。

「……いや、悪かった」

これ以上彼の機嫌を損ねる前にあっさり謝罪を述べるルシファー。今は彼の分析より、彼の栄養摂取を優先させる必要があったのだ。
こちらを睨む蒼い双眸が逸らされる前に。

「お詫びに機嫌を直して一緒に食事でもどうかね」

とりあえずもう一度直球を投げておいた。



(優しくするだけで解決する関係なら簡単なのにね)




これ以上続けたらややこしくてぐだぐだになりそうなので終わる。(もうなってるけど)

(言いたいことが言い切れてない。)





あきゅろす。
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