.自殺願望.

いっそ壊れてしまえれば楽なのに。

緩く緩く微笑んだ彼が自嘲気味に自身の髪をひと掬いするのをただ見送った。その時にたまたま掌がかすった瞳には涙は浮かんでなどいなかったけれど、その何気無い動作に泣いているのかと思った。

そんなわけないけれど。


「シェゾ」

手を伸ばすと頬に触れた。彼はまったく同じ視線の高さで此方を見つめてくる。逸らされない蒼い双眸、触れた白い肌。ただそれだけが自分と違うところ。

例えばその色が同じなら成り代わることが?

無意味な問いかけを頭の中で繰り返し、触れた頬から指を下に、下に。つぃ、と、唇をなぞり顎から骨を辿って、首、へ。

ぐい。

そのまま力を込めて壁に押し付けても抵抗はなかった。ないこともわかっていたけれど。

「俺はお前じゃない」
「…当たり前だ」

記憶も知識も全てをコピーしたとしても本人ではあり得なく、本人の考えが手にとるようにわかっても他人なのだ。

「“俺”は俺でしかないんだよ」

オリジナルはじっと此方を見つめている。壁に首を押し付けている手に力を込めたら、彼は何を思ってか足の力を抜いた。
合わせた視線の高さが少しだけ下がる。

その蒼は呼吸の狭間から此方の名前を呼ぶことはなかったけれど、揺らいだ瞳が助けを求めているように、思えた
。錯覚かもしれなくても。

「仮に、俺がお前だとしたら、どうする」

オリジナルはその蒼を細めて笑った。
その様が綺麗で、無意識に顔を近づけた。赤い、舌を這わせたら、その蒼と白い肌に色が写り込まないだろうか、なんて。

(ドッペルがオリジナルになりたいのか)(オリジナルをドッペルにしたいのかは)(わからないけれど)

生ぬるい感触を瞳に受けながら、シェゾは喉を鳴らす。ゆっくりと瞳を閉じて、目の前の相手の背中に腕を回した。

「俺なら迷わず、」

言って剣の柄を握る手に力を。





(自分を他殺する)




すらんぷ
(余裕があったら書き直したいけど正直どうすればいいのかわからない)

(しにたがりのはなし)




あきゅろす。
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