.大嫌いだ.

大嫌いだ大嫌いだ大嫌いだ。

その空のそれと同じ蒼い瞳もどこか懐かしい古代の薫りも染み付いたような古書の臭いも纏い漏れる闇の気配も何もかも何もかも何、も、かも、が!!

全てを奪って壊して潰したい、くらいに。

ぞわ。
寒気が全身を駆け巡った。

「……やるのか?」

思わず勢い余って敵意の塊をぶつけて押し倒した奴はしかし不敵に微笑むから不覚にもビクリと身を引いてしまった。

自分の下のそれはくつりと悪魔的に笑う。人を陥れて楽しむような微笑み、殺戮を楽しんでいる節のあるそれは悪魔だ化物だ怪物だ。

きら、と、流れるような銀の髪が皮肉に光る。その光に一瞬だけ見とれた。ああ中身はこんなに汚いのに、どうしてコレの器はこんなにも綺麗なのだ。

「……憎い、のだよ」

絞り出すように言ったそれは本心だった。そうだ自分はコレが憎いのだ。

人々に恐れられるべきなのに輪の中にいることが、良い方向に人の目を惹くその容姿が、たとえ光の差さない闇でもそれをものともしないその力の性質が。憎いのだ。

なんで。それは。ぜんぶ。



目を閉じる。集中する。動揺を圧し殺して瞳を開いて薄く笑った。あの蒼い眼がなんの、感情も、感傷もなくこちらを見ている。

「貴様の総てを奪い取ってやりたい程に、私は」

「…俺は黙ってやられるほどお人好しじゃないぞ、あいにく」

そう言って集中する魔導の性質も闇。光のない。無慈悲な。

ああだって。

この性質が自分にあれば本の闇も恐くなかっただろうか。なんて思うのだ。
この容姿が自分にあればそもそもこんなことに、は。

此方が手をかければ直ぐにでも反撃に応じるような気配で、それはなお身体を動かさずこちらを見上げている。恐くはないのか、この状況は。

恐くはないのか、私、が。

思ったらどうしようもなく感情が渦巻いてきた。ぐるぐると回る脳内に眼が熱くなる。身体が火照る。肺がぎりぎりと。

高笑いひとつして飛び退くと身体を起こした奴の向かいで構えた。

奪いたい。その瞳その力そのプライドその心その。

「全て…恐怖に沈め」
「………随分と嫌われたもんだな」

だって、その全て、自分が欲しかったものだ。

「ああ嫌いだよ大嫌いだ」

言葉を紡げば笑いが込み上げてくるばかりで、霞んで定まらない焦点が不愉快だった。

「私は、」





(全てを奪い取りたい程に貴方に焦がれて堪らない)


..

あや様がシェゾに嫉妬し憎悪し焦がれるはなし。



あきゅろす。
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