.Tender-tender.
ぎち、とか。厭な音がした。 (い、ぁあぁ、ぅ、ぁぁあああっ――!!!!) 神経がつながったまま胸を裂かれて心臓を掴まれて余りの痛みに声は音をなさなくて息が止まって開いた胸から引きずり出されるそれがズルリと拘束された腕は動かなかったけれどもはや動いたところで床に爪をたてるぐらいしか出来なかった、だろう。 どくん。 薄く笑う魔王の手の上でそれはまだ脈打ってはいたけれど、大動脈は引きちぎられた筈だからそれがとまるのは時間のもんだ、い。 「ぅぐあぁ、あ、ぐ、…っ」 ひぅ。 瞬間的に吸った肺に入った血が口から溢れ出る。ごぼごぼと溺れる錯覚より痛みを通り越した痛みが脳を支配する。 衝撃が強すぎて脳の機能が停止しかける。耳に入るのは過呼吸に似た自分の息遣い。身体は引き付けが止まらない。 (せめて神経ぐらい殺してからヤりやがれ!!) 霞む意識で毒づいたけれど鉄のベッドで微笑む魔王様は痙攣を続ける身体を面白そうに見ているだけ。 そして引きずり出してなお未だ動いている血液を生み出す機関を。 「面白いな、本体から離れてなお脈動を続けるか」 言って、歯を立てる。 ―――がり。 「ぃあ゛ァあ゛あああ!!!!」 (繋がっている繋がっている未だ神経が神経がしんけいぁあぁうあああ) 繋がった神経が脳に痛みを送る。そんな危険信号送ったって無駄なのだからさっさと死ねばいいのにどんな図太い神経だ!! というか生きてる人の心臓を喰う、な!!(本来はそのまま引きずり出した時点で文句をつけるべきだろうが) もはや痛みなのかどうかわからない余りの感覚に流れる涙も血も止まらない。上で楽しそうに笑う魔王様は血とか涙とかあるのだろうか。 ぶち、がり、ごり。 千切られる。生きたまま。 確かに闇の魔導師は死を超越した存在であって確かに自分は首さえ残っていれば再生出来るけれど確かに彼はその存在に興味を抱いていたけれどだからってこんなこんなこんな。 視界の隅で魔王様が確かに咽下、した。 さすがはやみのまどうしだ、なんて、いって、ないで。 余りの痛みに気が狂いそうだ。脳が死んだら終わりだってことを、少しは、どうか、せめて。 「さ、たん」 霞む視界と叫びすぎで潰れる喉と狂いそうになる痛みのなか名前を呼んだら一度だけ、それは。何故だか悲しい愛しい優しい、顔をしたのだけれど。 「こんな時ぐらい泣きわめいておけ」 それからまだ繋がっていた神経をひきちぎっ、 「―――あア゛ァぁああ゛ぁあぁぁあ――!!!!」 (それにはさすがに意識が飛んだ。それが幸いしてか気がふれることはなかったのだけれど) (それでも) 「……落ちたか」 彼は笑ったまま握りつぶした心臓を床に投げる。横たわるそれは血を吐き出しながらもそれでも不規則に荒い呼吸を繰り返す。心臓を取られて生きているのはどういう理屈かわからなかったが、あまり気にせずサタンは笑った。 「良い悲鳴だったよ」 ひとり呟いて、体組織の修繕に入った其の、ぼろぼろに濡れた涙を拭ってやったけれど、血にまみれた手は瞳の閉じられた白い綺麗な顔を汚すだけだった。 仕方がない。そしてくつり、笑ってその場を後にした。 (泣けるときに泣くと良い。それでもまだ貴様は人間なのだから) .←. 泣けない君に、歪んだ優しさ (これでも同意の上だったり実験と称した試みだったりするんだよ) ていうかもっとグログロドロドロを書こうとしたのになんでこんなどっちつかずなモノが出来てるの?なんでこんな!!← [管理] |