.光闇定義.



光がないと闇が存在できないなんて、それは間違いだ。
光がないと存在できないのは「影」であって、光があろうとなかろうと闇はそこに「ある」

「闇に呑まれまいと必死なのは、むしろ光のほうさ」

光が輝くのをやめれば、一瞬で世界は闇に包まれるんだって君も知っているだろう?
基本は闇だ。

光が差し込むからものが見える。
太陽ががんばっているから光がある。

「だが同時に、闇が光に消されるのも道理、だろ?」

うん、そうかもしれないね。

「だから君は優しいのかな?」

光に影響されてるから。





そういって光、彗星の魔道士はにっこり微笑むのだ。
胡散臭いことこの上ないのだけれど、それはどこかあの金無垢の彼女を思い出させて。

少し、腹が立った。





なんでだって自分がこんな和やかに会話を繰り広げていることすら腹が立つのに、何が悲しくて他人に優しいなんていわれなければならないのだ。
ああだって自分が恐怖の対象にならなかったら自分は何のために今まで生きていたのかって。

「ウンメイよ」

そういったあの占い師の小娘の言葉が脳裏をよぎって首を振る。
運命なんて認めるか運命なんて運命なんて。
自分の人生が運命だとかなんだとかそんな一言で他人に決められてたまるものか。

「君は何をそんなに焦っているのかな」

甘いもの不足?なんて軽く(胡散臭いことこのうえないのだが)首をかしげた緑の服を着た彼は棒つきの飴を自分に、ひとつ差し出す。
白と紫のぐるぐるが視界に入った。それは砂糖の塊。

「甘さなんていらないからお前をよこしやがれ」
「その言葉が甘いよね」

ああそうだ甘いのだ。
欲しいなら無理やり奪えば良いのに。

自分はいつからこんな甘くなったのだろうと闇の魔道士は舌を打ち。
それをみた彗星の魔道士は眉尻を下げてから少しだけ笑うのだ。



「光が出ている間は」



すっと、あの砂糖の塊をしまった彼は向かいの彼に手を伸ばし、そっとその光を受けて輝く銀の糸をすくう。
絡むことなく彼の手に収まったその髪をいとおしそうに眺めて、にぃ、と。

「闇は光に隠れてしまうね」
「何が言いたい」

さらり、彗星の手からこぼれた闇のかけらは太陽の光を受けてきらきらと輝く。
それは誰が見ても綺麗で羨むものだったのだけれど。

「けれど光がなくなったら、君は元の闇にもどるのかな」

甘さも何も必要ない、無慈悲で暴力的で容赦のない闇に君が染まらないように、光がそばにいてくれるんだと思わない?





「君の太陽は、だぁれ?」

なんて。おどけたように言われて一瞬だけ、金色に輝く瞳が脳裏に見えた気がした。





「君に呑まれないよう必死なのはむしろ僕たちのほうさ」

ニコリ笑う表情はそのままに、彗星はそっと闇の頬を撫でた。
それから顔を近づけて耳元でくすり。

「ね、シェゾ」

だってほらね、油断すると僕は君を欲しくなりそうだ。










.終わってしまえ.




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