.いつか.



彼女が悲痛な顔をして、あるいは精一杯の笑顔を浮かべて、何か言いながらきっと殺してくれるのだろうと、期待はしていないが希望はしているのだろう。

もはや当たり前になっている事項に運命だとか必然だとかは決して思わないがこれはもはや、決定事項なんだろうとぼんやり感じている節はある。

それでも抗いたいのは意地、でしかないのだがああもう考えるのはよそう。





「君も懲りないね」

青い空を背に覗き込むアルルが呆れたように言う言葉が右から左に流れていくのをぼんやり感じながら全くもって。自分でもそう思う。

けして敵わないのだ。
そして叶わないのだ。

だが其を認めたくないのも事実で。

「……シェゾ?」

彼女の声が転がるように空気を震わすのを耳で聞きながら瞳を閉じた。

仕方がないのだ。

彼女と己の関係は敵味方。闇の魔導師が彼女の魔力以外に何を望むと、いうのだ?
馴れ合いなんてしたくない。しては、いけない。そんな資格ありはしない。

こりない、なんて。

「それ以外に知らねぇんだよ」

ぼそり囁いた言葉は風に溶け込むなく空気に消えるけれど、身体に染み付いた不快感は風が吹いたって決して消えることはなく。

ああだって、それ以外に彼女と向き合う方法なんて知らない。
敵わないなんて思って彼女の前から姿を消すのは簡単だ。だけど自分はそんなことはしたくないのだ。

何で?

だって。

軋む身体を持ち上げる。節々だとかなんだかあちらこちらが痛むけれどあまり気にはしなかった。

「まだ起き上がっちゃだめだよ!!」

慌てて屈んで肩を支える彼女の手を、無意識に掴んだ。無意識だった。はっと肩を震わす彼女の金の瞳が開かれたのを視界の隅に捉えたのは、偶然。

だからその大きな丸い太陽の様な瞳と目が合ったのも、偶然。

偶然だ。必然ではない。運命だなんて、認めない。

「俺がお前を諦めるのは、俺が死んだときだけだ」



だって、自分の意思がそう決めている。諦めない。側にいる。





(いつか君に殺されるその日まで)




金色の太陽が優しく、切なく、揺れた。






...
いつか戦うこと以外で触れ合えることに気付いて欲しい。


あきゅろす。
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