一歩足を踏み出すごとに肩に担いだ黒いものがずり落ちそうになるのを直しながら歩くのは中々骨が折れる。
別に置いて行ってもいい気はするが、後の展開を思うとやはり持って行った方がいいのだろう。

もっともこの状態を誰かに見られでもしたら(特に知己の面子、だ)変態どころの騒ぎでは無くなり展開はますます悪くなりそうだが。
しかし幸いにも誰にも会わずにシェゾは目的の人物を見つけることが出来た。



.キャンディ・ブルー.







「おい」

どさり。
そう言って無造作にシェゾの肩から目の前に下ろされたソレをみて、レムレスは珍しく眉をしかめてシェゾを見上げた。

「苛めた?」
「馬鹿言え、ソレが突っかかってきたんだ」

レムレスは腰を下ろす自分の隣の地面に横たわる黒いソレ(シェゾに突っかかって返り討ちにされたのであろう可愛い後輩だ)を見つめ、しょうがないな、と微笑んでから手を伸ばす。
彼女の顔にかかった髪を優しくどかしてやると、ふわりと彼女特有(魔導力を高める香か何かか)の薫りが舞った。

「一途も健気も結構だが」
軽く嘆息まじりにシェゾは一言。まぁ彼から一途とかそんな言葉が聞けるなんて!レムレスは視線をあげる。

「変な言いがかりをつけんのは止めろって言っとけ」

別に誰もレムレスをとって喰いやしないって、俺が言ったって聞かねぇんだから。
そうやってマントを払いながら呟くシェゾは、なるほど食べる気はないらしい(もっとも、魔導力を奪う気はあるのだろうが)。

しかしまぁ闇の魔導士様が随分良心的ですこと。最初に見た時はもっとピリピリトゲトゲしていた気がするが。

(まぁ根本的に優しいひとなんだろうね)

くすり。本人が聞いたら怒り出しそうなことを考えてレムレスは口の端をこっそり吊り上げた。あぁまるで口の中で弾けるポップキャンディだ。

そんなことを考えているなんて気付かれたら大変だと、レムレスは立ち上がって優雅にお辞儀。

「ごめんね、ありがとう」
「あ?」

にこり、微笑んで本題に戻す。

「フェーリを連れてきてくれて」

でももう少し優しく連れてきてくれるかな、女の子なんだし。
顎に手を当てて困ったような仕草をするレムレスに、シェゾは、はんっなんて鼻で笑って。

「大事なら目を離さないこった」

それはまるでそう、恋愛の先輩みたいなこと言うものだから、ほぉらやっぱりこの人は。

「ご忠告感謝します」

やっぱりあまいひとなんだって。

ああそうだ、今度サイダー味のはじけるキャンディに彼の名前をつけてあげよう。なんて思ったら少し愉しくなった。

おや、食べる気満々なのはこっちじゃないか、なんて。




.終われ.

レムフェリを書こうとしたのにレムシェになってた!!(爆)




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