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※2009アルト誕生日小説。
7/25〜8/31までフリー配布です。
お持ち帰りの際は一言いただけると助かります。
掲載の際はサイト名と管理人の名前を表記して下さい。





【CAN'T TAKE MY EYES OFF OF YOU.】





「「アルト(君)!!」」

 だんっ!と机がけたたましく鳴る音が響く美星学園航空科のとある教室。午前中の退屈なカリキュラム(当然座学である)を終え、固まった体を解そうとする間もなくそれは現れた。
 教室内が一気にざわつく。その音のせいだけではない。それもそうだ。

「お前ら…」

 今、アルトの目の前に立っているのは、フロンティア船団は愚か、全宇宙で知らぬ者はいないであろうスーパースター―銀河の妖精シェリル・ノームと超銀河シンデレラことランカ・リーなのだから。

「いくわよ、アルト!」
「はぁ?お前らどうしてここにいるんだよ?仕事は」
「ドレイならつべこべ言わずについて来なさい!」

 シェリルが話す勢いそのままにぐっと顔を近付けてきた。未だにこの手のアクシデントに免疫が薄いアルトはそれだけで頬を赤く染める。

(いつ見てもムカつくくらいいい顔するわね)

 ハグもキスも幾度となく交わしたと言うのにこの様である。あの頃の感情を過去形にする気もないが、おそらく今の彼には(いろんな意味で認めたくはないが)そういう相手がいるらしい、ので、それでも尚この反応はどうかとシェリルは心の中で首を傾げた。

「シェリルさん…まぁまぁ。えっとね、次のお仕事がシェリルさんと同じ歌番組でね、収録まで時間があるから大丈夫だよ、アルト君」

 そのシェリルの一歩後ろで少し困った顔で可愛いらしく笑いながら、ランカが控えめに説明した。

「そーゆーこった、姫」
「じゃあ行きましょう、アルト先輩。ナナセさんも待ってますから!」

 さらに背後から同僚のミハエルとルカが顔を出した。
 そんな豪華メンバーがわいのわいのしている様子を見ていた生徒達はみなこう思ったと言う。

(何と言う眼福…!)


「いや、だからお前ら、行くってどこにだよ!?」
「「「「ランチ」」」」

 状況が飲み込めない当人を他所に、4人は声を揃えて答えた。




****





「みなさーん!こちらです!」

 アルトが連れられるがままに歩いて辿り着いたのは、この、美星学園で1番空に近い場所―屋上。アルト自身もよく座学をサボったり昼食の時に利用するお気に入りの場所だ。
そこではナナセが紫の髪をふわふわと揺らしながらこちらを呼んでいた。

「ナナちゃん、お待たせ!」
「そんなことないですよ!ランカちゃんも忙しいのに…久しぶりに会えて嬉しい!」

 まるでお花畑でも咲いていそうな風景を、ルカは目を細めて一際眩しそうに見つめた。

(あぁ、ランカさんのポジションが羨ましい…!)

「ルカ、心の声聞こえるぞ」
「えっ!?僕声出してました!?」
「いいえ、顔に書いてあるわ」

いつの間にか両サイドに立っていたミハエルとシェリルに小脇を突付かれ、ルカは赤い頬をさらに赤くした。

「そんなことより!せっかく主賓が来たんですから、みなさん始めませんか?」
「うんっ」
「今日はお弁当頑張りましたよー」
「よし、アルト、そこ座れ」

 色とりどりのおいしそうなナナセお手製の弁当を囲んで全員が座ると、アルトに気付かれないようにシェリルとランカが目配せをして突然立ち上がった。

「ランチはわかるけど…お前ら一体今日何なんだよ?」
「まぁまぁ、黙って聞けって」
「そうよアルト。こんなサービス滅多にないんだからね!」

 シェリルがお約束の決め台詞を言いながらアルトにウィンクを送ると、それは始まった。


Happy birthday to you, Happy birthday to you
Happy birthday dear "Alto"…
Happy birthday to you!


 歌姫達が奏でる贅沢なハーモニーに、そこにいる全員が酔いしれた。こんな特等席どんな大金を積んだところで手に入るわけがないのである。

「……おれ、の、誕生日…?」
「お誕生日おめでとう、アルト君!」

 歌い終えたランカが、ニッコリ微笑んで告げた。

「感謝しなさいよ、アルト」
「アルト先輩、おめでとうございます!」
「おめでとう、早乙女君」
「…だってさ。アルト姫♪」

 次から次へと起こることにアルトはまだ少しだけ混乱していたが、やっと自分の状況が飲み込めてきた。


 今こうしてみんなで楽しく話せていること。
 今日は自分の誕生日だったこと。
 そして、みんながそれを祝ってくれたこと。


 その整理が付いた瞬間、アルトの中に嬉しさが込み上げて来た。
 今まで友達と呼べる存在もおらず、誕生日に送られてくるプレゼントもたくさんあったがどこの誰だかわからない、大人の事情によるものばかりだった気がする。去年はバジュラとの戦闘で大変なことになったっけ。
そんなことを思い出していると鼻の奥がツンとしたけど、それは必死に食い止めて。




「……ありがとう」




 
 普通に―演じているのではなく、ここにいる早乙女アルトとして笑えているだろうか。自分がどんな顔をしているかわからないなんて役者失格だと思ったが(もう役者は棄てた、けど)、今はただ素直な感謝が伝わればいいと、それだけを思ってアルトはその一言に全てを詰め込んだ。
 
「………………」

 目を奪われる、と言うのはこのことなのかと、その滅多に見ることのできないアルトの屈託のない笑顔に、その場にいる全員が、見惚れ、息を呑んだ。
 言葉を発するのを忘れるほどに。
 
「よーし、じゃあ食おうぜ!!」

 静寂を破ったのはミハエルの声だった。
 彼も当然見惚れていたのだが、誰かが収拾を付けなければ誰も話せない状況になってしまうだろう、気配りの男である。

「あれー?姫なんかうるうるしてない?」
「ばっ…してねーよ!!」
「どうかなー俺は感動したけどなぁ、シェリルとランカから歌のプレゼントなんて、お前銀河一の幸せ者だぞ?」
「そ、そうよ!!何で泣いてないのよ、泣きなさい!」
「シェリルさん、それは…」
「あははっ!!」

 雲ひとつない偽物の青空の下で、本物の笑顔が絶えることはなく、その時間はアルトが今まで過ごしてきた中でもとても幸せなものだった。

 だから、その時に一通のメールが届いてることに気付くのは、ほんの少しだけ先の話。


→眼鏡ルート(準備中)
→兄弟子ルート(準備中)






****
アルト君お誕生日おめでとう小話そのいち。
とりあえずみんな仲良しな話が書きたかったです。
多分歌姫のはっぴばーすでーが書きたかったんだと思います←結論

この後から分岐です。
ここでは大人しくしてた眼鏡ルートと神出鬼没な糸目ルートです\(^o^)/



 




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