[携帯モード] [URL送信]



玄関口




2010ふたたん文

『Thank you for』



携帯を開いて発信履歴の一番最初にあるナンバーに電話する。
呼び出し音が鳴り始めてからいちにいさんで声がする。
最初から測っても,トータルで10秒経ってない。
これが,ここ数日でリサーチした,二見が俺からの電話に出るまでの平均タイム。
時間帯は色々ずらしてみたのに,それは絶対揺るがなかった。
もしかしてこいつには俺の電話を察知する特殊能力かなんかが備わってるんじゃないかと思うくらい。
てとはあんまり早くにかけるとまずいってことだなと,俺は時計を文字盤に穴が開くほどじっと見つめた。
短すぎる待ち時間は,かえってタイミングがつかみにくい。
カチッカチッ。
一番細くて速い針が10を過ぎるか過ぎないかで携帯を開き,発信履歴を呼び出した。
一番上にある番号を選んで通話ボタンを押す。

もうすぐ全ての針が文字盤の一番てっぺん,12の数字を指そうというところ。

なのに。

「あれ?」

聞こえるはずの呼び出し音は聞こえないで,代わりに留守番電話サービスのアナウンスが流れてきた。

『留守番電話サービスに接続します』

機械的な女性の声が最後まで言い終わるのと同時に電話を切る。
気を取り直してもう一回最初から。

『留守番電話サービスに』

また,駄目だ。もう一回。
何度かそれを繰り返して,俺はやっと気がついた。
これって向こうもかけてきてないか?
多分,待ちきれなかったのかもしれない。
それともかかってくるかこないかと考えてるのが嫌だったのかもしれない。
気持ちはなんとなく分かるけど。
一旦電話を切って待つってことを,今日だけはどうしてもしたくなかった。
それじゃ意味がないから,何度だってかけ直す。
ようやく電話が繋がったときには,もう0時を3分も過ぎていて,開口一番俺は二見に「馬鹿」って言った。

「締まらねえだろ。待ってろよ」

「ごめん。なんかソワソワしちゃって」

しゅんとしてるようでいて,二見の声には期待がちらちら見え隠れしてる。
はいはいはい。そーだろよ。
お前は絶対こういうベタなの好きだと思った。
だから―――まずはこれが最初のプレゼント。

「誕生日おめでとう二見」

誰より先に,この言葉を。

メールだったり,電話だったり,手段は違えど毎年のこれが俺たちのお約束。
日付が変わるのと同時,にするつもりが,今年はちょっとだけ時間はオーバーしてしまったのが悔しいけど。

「ありがとう」

電話の向こう,すごく嬉しそうな顔で二見が笑ったのが見えなくても分かるから。

ありがとうはこっちの方だ。

そう,聞こえないように呟いた。

生まれてきてくれてありがとう。
俺と出会ってくれて―――ありがとう。

毎年俺は心から,そう思うよ。
来年もきっとそう思う。

きっとずっといつまでも。

俺は,お前を,好きでいる。





HAPPY BIRTHDAY !!

20100930










☆突発企画
アナタのお宅の主人公くんのお名前教えてください


案内

更新



物置

贈答

金庫

活動

部熊

連絡



御礼





愛の占い部屋





参加☆
二見×主人公webアンソロジー
当たって砕けろ
(※高二企画です)



あきゅろす。
無料HPエムペ!