「マスター」
「あれっ、レン、今日は早いんだね?」
朝の6時。今日は土曜日。
珍しく早く起きれたので寝床を出て、リビングで雑誌を読んでいた時だった。
レンも早起きしたらしい。
目を擦りながら「ん…。まあね」なんて言ってる。
「ねぇ、マスター。今日は買い物ね?」
いきなりハッキリとした声で言われ、少しドキッとした。
「う、うん。わかってるよ?」
「じゃあ行こうよ!」
「あ…いや、まだいいでしょ?」
まだ6時ですよ?と続ける私に対して、レンは頬を膨らませた。
「オレが早く行きたいからそれでいいの!」
私の服の裾をひっぱるレン。
いや。無理でしょ。
「でもこんな早くじゃ、お店どこも開いてないよ?」
「じゃあ散歩だけ!」
そうきたか…。
でも正直今さらながら眠気が襲ってきてるんだよなぁ。
「…駄目なの?」
返答がしばらくない私に裾をひっぱる力を少し緩め、上目遣いで言うレン。
なんて可愛いんだ…
つい変態なことを考えてしまう。
「じゃあ、いいよ…。レンも着替えておいで」
私、レンに甘いと思う。
レンは「じゃあすぐ着替えてくるからマスターも早く準備しろよな!オレより遅かったらしょうちしないから!」と笑顔で言い残すと、自分の部屋へと行ってしまった。
勿論走って。
これは早く準備しなきゃな…
私は一人で苦笑いをして自分の部屋へ向かった。
●○●
ええっと…携帯は入れたっと…
財布財布…
あれ?財布ないなぁ…
「マスター!準備終わったか!?」
元気よくノックもしないで扉を開くレン。
「うわぁっ!びっくりさせないでよね!」
私の言葉を無視し、レンは私を少し睨んだ。
「マスター、まだ準備できてないの?」
んなこと言われましても…
「財布が見当たらなくて…ね?」
「ふーん…」
困ってる私をジロジロと見るとレンは小悪魔らしき笑みを浮かべた。
「な、なに?」
「オレより遅れたらしょうちしないって言ったよね…?」
だんだんと近づいてくるレン。
な、なに?この雰囲気は…
身の危険を感じ、後退りする私。
「い、言ってたね」
ついには壁に背中がついてしまった。
これ以上逃げられない。
更にニヤッと笑みを浮かべるレン。
「だったら…」
そう言うと、レンの顔が近づく。
そっと重なる唇。
「ん…」
不意に絡む舌。
や、やばい。
「んっ…やぁ…」
クチュッと軽く音がたつ。
「ふっ…」
やっとの思いで終わったキス。
「これでチャラにしてあげる♪」
「なっ…!///」
頭の後ろで手を組み、後ろを向いてるレン。
な、なんて奴だっ!
恥ずかしさと怒りがぐっちゃぐちゃになって襲ってくる。
チラッと首だけこっちを向けたレン。
その表情は勿論ニヤッとしたまま。
「出掛けたらバナナパフェね?」
「なっ、なんで!?」
「オレより準備遅かったからっ」
「さっきチャラって言ったじゃん!」
やっぱコイツ世界で一番敵わない奴かもしれない…。
【完】
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