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「ねーねーレン」
「んー?」
「キスってさ、どんな感じなんだろうねー」

時が止まったように感じた。
何を言い出すかと思ったら、きっとミクオの奴だなと想像がついてしまう。

「ミクオに何か言われた?」
「別にっ。ただキスって結構良い感じらしいって聞いただけ」

なんだよその“結構良い感じ”って。
年下の俺から言うのもなんだけど、あいつマセてきてるから将来心配だ。
というより、周りの皆の影響が怖い。
たとえば、リンとか...

うん、リンしかいない。
リンは何も知らないからすぐ試してみたくなるらしく、弟のオレも大変なんだ。

「あーそ...」
なるべく触れたくない話だな。
軽く返事をして雑誌に目を移し返した。
リンはむすっとした顔で俺に近づく。

「ねー聞いてるのー?」
「聞いてるよー」
「ねえ、レンしたことあるの?」
「したことあるって、何を。」

勿論想像付いていた。
だけど、なるべくそっちの方向の回答がでないことを願った。
そんな俺の気持ちとは裏腹にリンは平然と、いや、多少照れていたが、
『キスだよ』と言った。

「リンには関係ないだろ?」

ここで男の維持がでてしまった。
勿論したことなんかないけど、なんか男として
ファーストキスもまだというのは俺のプライドが...。

「レンのバカ!もう知らないし!」
「ってえな!」

何で俺蹴られたんだ?
よくわからないまま足の脛を俺はさすった。
何故かリンはそっぽを向いてテレビへと視線を向けてしまった。

会話のない部屋に知らないアーティストの歌声が響き渡る。
か、かなりきまづい。

俺、何か悪いことしたっけ?
でも怒ってるのは見てわかるし、

「なあ、リン」



うわ、普通にスルーしやがったよ。
なんとも虚しいものだ。

「なあってばー」
「…」
「おいリン」
「…」
「おーい、リンさーん」
「…」

根性だけは認めてやるよ。
だけど無反応はこっちが悲しくなる。
俺は近所の迷惑も考えずに、精一杯腹部に力を入れる。
大き目の声を出す。

「リン!」
「うっさいなー!」

くるりとこっちを見てくれたのは良いが、その表情は今にも鬼にへと変化してしまいそうなものだった。
怒ってる、うん。

「なに怒ってるの?」
「べつにー」
「何かあるからそーゆー態度とってんだろ?」
「レンには関係ないでしょ?」

あれ、これどっかで聞いたセリフ。
リンは少し鼻を鳴らし、傍にあったミカン型クッションに顔を埋めた。

「あーそーですか」

きっとほっておけば機嫌もなおるだろ。
長年一緒に居て理解したもので解釈し、
俺は再び雑誌へと視線を戻した。

「え、えっ」
焦ったかのようにリンはミカン型クッションから顔を上げた。

「あーそーですかって何よ!は、話終わってない!」
「関係ないって言ったの誰ですかー?機嫌損ねて話きこうとしなかった人は誰ですかー?」

俺は雑誌から目を離さず、嫌味ったらしく言ってみた。
横目にリンを見る。
怒ったのか、小さく震えてる。

「それレンじゃん!」
「は、は!?俺?リンだろ!」
「レンだってそうだったじゃん!」

え、え。
なんで泣くんだ!?
うぅーと小さく声を漏らし、目尻にだんだんと涙を溜めていくリン。
胸元のリボンをぎゅっと握り締めている。

「え、え泣くなって!」
「レンが悪いんだからっ、ねぇ!」

ついにはうわあああっとおお泣きする。
胸元にあったリンの手は両手で目をごしごしと擦っている。

「ご、ごめんって!謝るから泣かないでよ!」
「じゃっ、じゃあ、リンのお願い一つ聞いてくれるっ?」

少し赤くはれた目で俺のネクタイを引っ張った。

「わかったから!」

「にひひー、じゃあ、」

すんげぇ笑顔のわりには目にまだ涙が溜まっている。

あー、なにお願いすんだろ…


『試してみようよ』


(も、もしかしてさっき言ってた…)
(うん!キス!)
(絶対…?)
(絶対!)
(ですよねー)


ワガママ姫に口づけを


_______

桜井 聖夜sama

遅くなった割には
甘くもなく、裏ものでもなく、
駄文すみませんorz

レンが現代っ子らしきものに え

とりま、これからもよろしくお願いしますね!


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