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マスターが帰ってこない。
なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで
もう10時をまわってるのに。
玄関まで行ってみた。
閉まりきったドア。

マスターはこんな時間まで何をしてるんだ。
わかってる、薄々。
やだ、やだやだそんなの絶対やだ

「ただい、ま?」

自分の世界に入りきっていたオレはマスターが玄関にいることに気が付いていなかった。
マスターはオレの行動に不信感を感じたのか、首を傾げてる。

「ますたぁ…」
「なっ、どうしたの?」

オレはひっしにマスターにすがり付いた。
ほら、やっぱり。
キスマーク。
臭いだって違う。

「なっ、どうしたの、レン?」
「あはははははっ、こんな時間まで何やってたんですか?」

オレはただ笑う事しかできなかった。
答えなんかわかってるんだ。
どうせ『ミクオ』って男の名前が出るに決まってる。

「えっと、その。ミクオと…」
「またミクオ兄ですか?なんでですか?ねえ、なんで」

オレは唇が触れるか触れないかの所まで攻めた。
マスターはただ「え?え?」と不安げな顔を浮かべている。
そんな顔も好きだよ。マスター。

「ミクオ兄もオレもボーカロイドです。どう違うんですか?」
「どうしちゃったの?」
「でもオレの方がマスターのこと好きなんですよ?」
「だから、どうしちゃったの?おかしいよ、今日のレン…」

マスターは隙を狙って靴を脱ぎ捨て、部屋へ駆け込んだ。
バカだなぁ。このオレから逃げられる訳ないのに。

オレは背を向けたマスターの腰に手を回した。
マスターの足がピタリと止まる。

「なんで逃げるんですか?ねぇ、なんでよ…。怖いんですか?オレのこと」
耳元でささやくと、ビクッとマスターの体が反応した。
「や…その…」

おびえてるマスターを楽しみながら、目を合わせないマスターの足首に包丁を立てた。

「な、なんでそんなもの持って!?」
「隠してたんですよ。気が付きませんでした?」

その拍子にガタガタと震えだすマスター。
すでに涙目だった。
「気が付く訳ないじゃない!…それで、私になにするつもり」

マスターは思いっきりオレを睨みつけた。
オレは余裕そうに笑みを浮かべ、更に包丁をマスターの肌に近づける。
「怖いなぁ…。ただ足首切ってミクオ兄の所に行かせない様にするだけですよ?」

オレの言葉に目を大きく見開いて驚いていた。
「いや…いやだ…」と小さく呟いているマスター。

そんな顔しないでよ。マスター。
なんでオレじゃ駄目なの?
オレにはもうわからなくて

ただただ、壊れた心を隠しマスターに優しく囁いた。

「大好きだよ。マスター」


手遅れだ。好き過ぎるって怖いね。





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