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マスターはどんな人がタイプなのかな。
彼氏いるのかな。
好きな人いるのかな。
僕はどんな存在なのかな。

何も知らない僕だけど、一つだけ知ってしまいました。

キスの味


「レンー。パジャマ着替えた?」
「もう、少しです!」

すっかり日も地球の裏側に隠れて、その代わりに輝く星と月が浮かび上がってきた。
慣れない手つきで新しく買ってもらったパジャマに着替える。
セーラー服はボタンがないから、慣れてないのは当たり前。
マスターは僕に色んな服を着せてくれる。
少しでも人間気分を味わってくれれば嬉しいというマスターなりの気遣いだ。

僕はマスターのそんなところも好きだし、

うん、口に出したら終わりそうに無いぐらい。

僕は最後のボタンをきっちりと直してからマスターのいる部屋へと駈けた。
マスターと僕は一緒に寝ている。
部屋が無いからという理由だけど、僕にとっては好都合なわけで。

「明日早いから先寝るねー」
「朝練ですか?」
「そうそう、もうすぐ大会近いからさっ」

マスターは僕の頭を一回撫でてからおやすみ、と一声駈けて布団の中へ入った。
僕は電気を二番目に暗い明るさに設定してからマスターの隣へともぐった。

隣をチラリと見てみると、マスターの背中が視界に入った。
もう。向こう側向いてちゃ顔見れないよ。

「マスター…こっち、向いて下さいよ...」
「んん...」

軽く体を揺らしてみると、マスターは寝返りを始めた。
あれ、もう寝ちゃってるんだ。
最近部活で忙しそうなのは知ってる。
けど、その分学校へ行く時間が長くなって、僕にとってはあまり良い話ではない。

だから寝るときだけは一緒だから、この時間が一番好きなのに、マスタ−ってば。

明日も早い、ってことは、僕が起きた頃にはマスターもういないかもしれない。

そんなことを考えているとマスターの口元がかすかに動いたような気がした。
「れ...ん...」

「え、はい?」

あれ、目、閉じてるや。
寝言?
なら少し嬉しいかもしれない。
だって、きっと無意識の内に僕のこと考えてくれたってことでしょ?
違うかもしれないけど、そういうことにしとく!

「マスター…」

小さく、起こさないように呟いてマスターの髪をかき分ける。
薄暗い中、マスターの表情がよく見えない。
けど、柔らかそうな唇に目がいってしまった。

あれ、マスターってキスしたことあるのかな。

変なことに疑問を持ってしまった。
勿論、僕はしたことないけど。
もし、誰かとしてたら、嫌だな...

そんなことを考えてしまうと更に目が離れられなくなる。
少し、少しだけなら。
駄目なのはわかってるんだけど、ボーカロイドにだって理性ってものもあるし、

仕方なかったんだよ。

そっと重ねる。
ふわっとした感触が残る。

うわっ、やっちゃったよ。

マスターは起きてないみたい。
一安心してからマスターの顔をもう一度見る。
もしかして、僕にとってもマスターにとっても初めてだったりするの?

知ってしまいました、キスの味。

だんだんと気恥ずかしさが込み上げてきて、耐え切れなくなった僕は布団の中へと逃げた。
明日早く起きて、マスター起こさなきゃ!

もう、恥ずかしすぎて、何がなんだかわからなくなる。
できれば忘れたい。

でも、でもさ

僕、マスターの特別ってこと?

それなら、いいな...

***

「ふぁー、おはよー」
「お、おはようございますっ」
「あれ?早いね今日は。絶対私の方が早く起きると思ってたのに」
「そ、そうですか?なんか早く目が覚めちゃって」

マスターはきっと何も覚えていない。
本当に悪いことしちゃったな。
マスターにあやまる?それとも誤魔化しとおす?

僕には難問だった。

僕はしばらく、マスターの顔を見ることができなかった。

(ごめんなさいマスター)
(僕は悪いコです)

⇒おわり



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