ガンダムマイスターとフラッグファイターの二人。ニールはグラハムが敵なのを知りながらマイスターであることを隠して交際してました ―――――――――――――――――――― これで最後にしようと言った。 本当は敵同士なんだと告げた。 今まで全部嘘だったと、初めて彼に嘘をついた。 彼は困ったように眉を寄せ、予想外にも微かに笑った。 “私も君を好きではなかったよ” 朗々と、用意していたかのようにそう言って。 或いは彼は最初からすべて知っていたのかも知れない。 もうそれを確かめる機会は、永久に失われてしまったけれど。 全部嘘だったと言うおれに。 私も好きではなかった、と。 彼はわざとそう言った。 最後まで残酷なほど優しい男だった。 好きではない、なかったと言い合って、「最後の」セックスをする。 なんて愚かな生き物なのだろうか、自分達は。 頬を伝う涙を、生理的なものだと託つけたのは自分だけじゃない。 思考など熱の中には要らなくて、ただ相手と自分の体があればいいだけの行為に「愛し合っていない」二人なら心だっていらない。 そのはずだ。 だから何も思ってはいけない。 みっともない喘ぎ声と荒い吐息と時々漏れる小さな低い呻き声、それだけが狭い空間を支配していた。 しっかりした男の背に躊躇いもせず爪を立てる。 深く深く突き刺して、抉るようにいくつも線を刻んで、それを何度も何度も繰り返す。 自身の爪が割れる心配も、素手の指と爪の間に血が染み付いていくのも、最早どうでもよかった。 お返しとばかりに白い肌につけられていく赤い鬱血痕を、こちらも咎めない。 乳房も腰も掴まれた痕が赤くなる。 肩口に噛みつかれ、くっきりと歯形が浮いた。 それでも、互いに咎めない。 どころかいっそ。 どうかもっと痛めつけてはくれないかと思う。 刑罰とでも言うように。 罪の刻印とでも言うように。 「傷付ける」と「刻み付ける」の違いは付けられた者が決めるものだ。 だから、もっともっと。 もっともっと、本能のままに。動物のように。 そうしなければまた何か考えてしまう。 ぎり、と立てた爪がぱきりと鳴った。 もう何が痛いんだか気持ちいいんだかわからない。 いや、痛みすら快楽になったのか。 血と、汗と、痛みと、快楽があればそれでいいのだと思う。 それが自分たちだと思う。 男の背中に突き刺した己の爪が手が男の首を締める日も、肌を滑る男の舌が歯が己のこの喉を噛みちぎる日も、もう、やっと、遠くはない。 この意味もなくこぼれる嬌声は遠くない未来、己の歓喜の歌と変わるのだろうか、悲鳴と変わるのだろうか。 どちらにせよ、泣き声であることには変わらない。 眼を閉じれば、終焉なんて近くに見えている。 どんな甘美な快楽も、終わりが来るのは目に見えてる。 ただひたすらこれは、 サディスティックで、マゾヒスティックな、関係。 刻む (痕が消えたら本当のサヨナラ) [グループ][ナビ] [HPリング] [管理] |