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指先で告げる(高杉)



子供ができたと告げた時、晋助はまるで他愛ない雑談に相槌でも打つような調子で「そうか」と言って表情を緩めた。

「随分と冷静だね」
「取り乱したところで何も変わらねェからな」

足を崩して座る晋助に、視線で促され私から身体を寄せるのがいつもの触れ合う際の合図のようなものだったのに、
今日は晋助から私に手を伸ばしてきた。
表情はいつもとかわらない。穏やかな瞳、ほんの少し上がった口角。
激情を内に秘めていてもそれを表面に見せない余裕の落ち着きぶり。
けれど今の晋助のその指先は、待ちきれないといったように、私の腕に触れ、掴み、胸の中に閉じ込めてくる。
なんだか、くすぐったいな。
胡坐をかいた晋助の足の間におさまり、背中を預けた。

「産むからね」
「それ以外に選択肢なんざねぇだろ」

晋助の胸が呼吸するたび浅く動く。
規則正しく動く中、たまに深い呼吸が混じっていた。
顔は見えないけれど、微かに笑みでも浮かべているのだろう。
晋助のさらりとした髪が、すっと頬に当たった。
私はくせっ毛だから、いつもこの美しい髪の毛がうらやましかった。

私達の子供は、どんな髪質なのだろう。
どっちに似るかな。性別も楽しみだ。
どんな顔をしてるんだろう。
いつも、笑顔でいてくれたらいい。

「晋助は今、どんなこと考えてるの?」
「だいたいお前と同じようなこったろうよ」

どこで産むのか、晋助と暮らせるのか、
今後どうするか考えなければならないことはたくさんある。
でも、今はとても穏やかで幸せな気持ちだから、そういうことを考えるのは後回しだ。

私の耳に口付けながら、晋助は着物の帯のあたりに手をまわす。
今まで肌に触れられてきたどの瞬間よりも、帯に当てられた晋助の手から、
しみじみとした深い、何よりも深い愛情を感じた。

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拍手ありがとうございました!


あきゅろす。
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