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「an oath of allegiance」




突然ですが僕の恋人はこの世のものとも思えないぐらい綺麗な人だ。絶世の美人とも称されたあのクレオパトラにすら劣っていないと胸を張って言える。そしてその美しい容姿に加えて家庭的であるから最早非の打ち所がない。人間必ずしも欠点はあると言うが全く見当たらず、正に完璧な人だった。と思っていた。少なくとも付き合って1年間は。



しかしやはりこの世に完璧な人はいないんだと身をもって痛感したのは1年過ぎたある日。僕の何気ない行動が引き金となって事件は起きた。











「スーザク!」


大学の抗議をほぼ居眠りで過ごしていた僕はこの日も例外なく爆睡していた。親友に肩を叩かれなければ目覚めることはなかっただろう。瞼を擦りながらゆっくりと身体を起こしながら親友の名前を呼んだ。




「ジノがこの時間にいるの珍しいね」


いつもならこの時間帯は彼と顔を合わすことがない。



「実は急に一人来れなくなってさーお前を誘いに来ってわけ」


全く話の主旨が解らない。いくら親友と言えども理解力には限界がある。
スザクが何のことと首を傾げると具体的なことを話し始めた。



「合コンだよ合コン!誘うって言ったらそれしかないだろ」


いや少なくとも僕は普通に男だけの飲み会だと思ったよ。そう心の中で呟いた。



「ジノ、僕には恋人がいるって知ってて誘ってるの?」


もちろんと彼はサラリと言ってのけた。前々から常識に欠けている奴だとは思っていたが………つい頭を押さえたくなる。



「マジで頼むよ!」


この通りと頭を下げられてもイエスと答える訳にはいかない。当たり前じゃないか、僕には自慢の恋人がいるんだ。その人を裏切る行為などできる筈がない。



「別に飲みに行くだけだから、な?」

「悪いけど他当たってよ」


きっぱり断ってジノの横を通ると腕を掴まれた。彼にしては珍しくしつこい。



「何で僕なの」


これは訳がありそうだと溜め息をついた。聞く耳をもった僕にジノは目を輝かせている。これじゃまるでご主人様に構ってもらえて喜ぶ大型犬だ。



「相手の女の子がどうしてもお前に会いたいって言ってて」

「見栄張って断れなくなったわけか」

「さっすがスザク!」


そりゃ高校からの付き合いだから嫌でも解るよ。



「でも行かないから」

「ちょっ」


理由がそれなら尚更行く気にはなれない。交遊関係が広い彼なら何とかなるだろ。



「良いのかそんな態度で」


講義室の扉を開けかけた時、彼はニヤリと口許をあげてこちらを見ていた。やけに不気味な笑いに不信感が募る。



「お前、今まで単位とれたのは誰のお陰だったかな?」

「っ」


痛い所を突かれた。スザクは先にも述べたとおり居眠り常習犯である。そんな彼が単位を全て取得できるのも親友の手助けがあってからこそ。一見不真面目に見えがちのジノは案外授業態度は真面目で且つ頭が良いのでスザクにとっては非常に有り難い存在なのだ。テスト前は彼のノートを大学のコンビニでコピーするのが習慣になっている。そうだ彼には多くの貸しがある。そしてそれを自分は返していない。


先ほどまでの強気は何処へやら。ジノは一気に畳み掛けてきた。




「人に貸しだけつくっておいて返さないのは男としてどうだかね」

「う゛っ」


完全にスザクの負けだ。流石に自分にだってプライドはある。




「解った。行くよ」

「そうこなくちゃ」


ジノはスザクの肩を叩くと早速幹事にメールをした。



まぁただ飲みに行くだけなら良いよね。


きっと僕の恋人なら許してくれる。何処からそんな自信が湧いてくるのかは解らないが今までも特に喧嘩をすることなく円満にやってこれたんだ。



スザクはひとまず恋人に“今日は友達と飲みに行くから”とメールを送っておいた。



この過信が故の行動がまさか恋人の、彼の本性を知る引き金になろうとは当然この時は知る由もない。












「ヤバい飲み過ぎた」


軽く2、3杯程度で止どめておこうとしたのに隣りにいる奴がお構いなしに注ぐものだからつい飲んでしまった(注がれたら必ず飲まないといけない自分の性格が恨めしい)その上、女の子が腕組されて身体を密着してくるものだからすっかり服には香水の匂いが染み付いてしまっている。



これじゃ今夜は会えないかな。


流石に時間も11時を過ぎてるしいくら明日が土曜日だといって遅くに押しかけるのは憚れる。そう思って自分の家へと帰宅しようと足が向く方向を変えた。途中近くのコンビニでカップ麺とお茶を買って少し早めに歩いた。季節は11月ともあってコートがないと外に出られない。温かい部屋で温まりたいと思うと益々歩調は速くなる。スザクが暮らすアパートは2階建てで自分の部屋は2階一番奥。階段を静かに上がって鍵を鞄の中で漁りなりながら歩くと扉の前に誰かが立っているのが電気のない暗闇でも解った。




「お帰り、スザク」


目の前に立っていたのは恋人、ルルーシュ・ランペルージ。


どうしてこんな時間に?

いつから待っていたの?


聞きたいことは山程あるのに怖いぐらい穏やかな表情の彼に言葉が出なかった。




「ひとまず開けろよ。寒いだろ」

「あっうん」


急いでドアを開けてストーブをつける。こたつはまだ出してないから足下が寒い。彼を優先的にストーブの近くに座らせてコーヒーを淹れようと立ち上がると腕を掴まれて先へ進めなかった。掴まれた部分だけ酷く冷たかった。



「今までどこ行ってたんだ?」


彼の問いに肩を強張らせる。普通にただ“男友達と飲みに行った”と言えば良いのに言葉が出ない。彼の前で下手な嘘はつけないと真直ぐに貫く眼を見て思ったからだ。



「この匂い、男友達と一緒ではないな」


遂にビクッと肩を揺らして視線を逸した。これ以上彼の顔を見たら恐怖で動けなくなる。しかしスザクの考えなどお構いなしにルルーシュは無理やり自分の方へと顔を向かせた。ガッチリと合う紫の瞳に怯える自分の顔が移る。



「スザク」


そっと頬に手を添える行為。普段なら何とも思わないのにゾクリと鳥肌が立つ。



「少し躾が必要だな」


狂喜染みた恋人の表情が綺麗だと思った僕も彼と同類なのかもしれない。











――くちゅっ


――ぴちゃっ




狭い部屋の中に響く卑猥な音に耳が麻痺してしまいそうだ。このアパート壁が薄いから隣りの人に聞こえてるだろうなと考える余裕すら恋人は与えてはくれない。彼からのご奉仕はとてつもなく快感だ。それはいつもと変わりない。変わりないのだが………




「っはぁっ」


限界は当に過ぎているのにイケない。いや、イカせてくれない。ルルーシュはスザクが達しそうになると根元を掴んでそれを阻むのだ。先ほどからこれの繰り返し。いい加減我慢の限界でルルーシュの肩を押すと彼は切れ長の瞳を細めて睨み付けた。




「躾がなってない犬にはお仕置が必要だな」


妖しく笑うその表情に意識が釣られている間、ルルーシュは手早く自分がしていたネクタイを両手首に縛った。



「ちょっこれ!」


これじゃ拷問だと眼で訴えても彼は聞く耳を持たない。



「言っただろ。お前を一から躾すると」

「っ」


再び始まるルルーシュの奉仕に押さえていた声が漏れる。これではどちらが攻めなのか解らない。



「ふふっ限界か?」


悪いけど随分前にきてます。



「でもまだイカせない」


楽しそうにスザクの一物を弄るルルーシュは今まで見たことがないほど優越感に浸っているのが感じられた。



「っそんなに、合コン行ったことっ怒ってる、の?」


息を切らしながら彼に問う。自分が嘘をついて行ったことに怒ってるのなら謝りたい。
しかしルルーシュは特に反応せず先端から少しずつ流れる精液を舐めていた。



「ル、ルーシュっもうっ!」


駄目だこれ以上は!!


「仕方ないな」

「っ!!」



ルルーシュは先端部分に爪を立てると呆気なく達してしまった。





「全く、そんなに溜まってたのか」


顔についた精液を指で拭いながらスザクを見るその様子は少し飽きれている様だった。




「ルルーシュがイカせてくれないからだろ!」


手の自由を奪っているネクタイを解こうと悪戦苦闘するスザクを見てルルーシュはクスクスと笑っている。



「これで解っただろ。ご主人様の命令は絶対だと」

「ご主人様?」

「俺とお前の関係だよ」


いつからそんな主従関係になったんだ!?



「お前は俺のことを美化し過ぎているがこれが本来の俺だ」


スザクの中で何かが音を立てて崩れていく。



「これからは俺以外の奴に触れさせるな。命令だ」


顎をくいっと持ち上げられる。逆らえない。いや逆らおうとも思わない。本性を知ってしまった今でも彼を想う気持ちは変わらないし、むしろ前より強くなった。既に僕は彼に陶酔してしまっているのだから。




「はい、ご主人様」


身も心もあなたのものだ。それを体現する様に誓いの証に口付けをした。









僕の恋人は美人で頭も良くて、家庭的。だけど独占欲は人一倍強くて女王様気質。




そんな彼だけど僕は変わらず愛し続けることをここに誓います。




【END】


あきゅろす。
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