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so long …












ランスロット・アルビオン
ロイドの傑作であり、この世で最も洗練された殺人兵器。
デヴァイサーのポテンシャルに柔軟に対応する為に精密な計算をコンピュータへ指示し返された結果を分析、更なる試行錯誤を繰り返す。
フレイヤ対策と同時進行で深夜までの調整が連日続いているが、ロイドにとってそれは苦痛ではなかった。
ただ兵器を極限にまで高める事に、正義も悪も倫理さえ関係ない。
それは未知への挑戦という、どこまでも純粋な狂気。
「良かったんですか?」
ランスロットの微調整に没頭していると後ろから声を掛けられる。
デジタル時計に目を移すと既に夜明けに近い時間だった。
「何がぁ?」
忙しなくパネルを操作し画面から目を離さず生返事をすれば再度、ニュアンスを変えて問い掛けられた。
「ここに居て、良いんですか?」
誤魔化す事を許さない、スザクの語調の変化を捕えて手を止めて振り返る。
「セシル君にも同じ事言われちゃったし〜後悔してる様にでも見えるかなぁ?」
「もの欲しそうな顔してますよ」
思いがけない言葉に思わず目を見張ってしまう。
途端に、体の力が抜けた。
「……あのねぇ…そういう事言う?」
悪びれずに、にっこりと微笑むスザクに苦笑いしながら言葉を綴る。
感情を吐き出せる様に、という気遣いなのだろう。
捻くれている彼なりの。
しかしロイドにとっては分かりやすいスザクの不器用さ。
いかに皇帝の騎士と言えども、ロイドにすればまだ幼く未熟な部下に心配されているこの状況は、自分の感情が予想以上に表に出ている失敗を犯していた様だ。
「図星ですか?」
「君の空気を読めない所は変わらないねぇ…」
瞑目して、深い溜息を付くと体が重くなった。
体から緊張感を解いて纏っていた仮面(ペルソナ)を外す。
もう、ロイドの本質を理解する人間は少ない。
「一緒に、いる事が全てじゃないとかさ。」
眼鏡を外して硝子越しではない視界になれば、根を詰め過ぎた体が悲鳴を上げているのを自覚する。
その悲鳴は果たして何に対してなのか。
「違う道を選ぶって決めたんだけどね。割り切れて無い様に見えるなら僕もまだまだって事。」
心が痛いと訴える自分の……感傷を自覚して尚それを捨てる覚悟はもうとっくに出来ている筈なのに。
「何故そこまで?」
シュナイゼルの元へ行っても彼は責めないだろう。
「君も、今までそうだったじゃない」
笑ってそう返せば、スザクは苦い顔をしてロイドを視線で責めた。
「はぐらかさないでください、ロイドさん」
「はぐらかしてなんかいないよ?……本当の事じゃない」
益々、険しくなる彼の顔に苦笑しながら答える。
「それに、これは僕の科学者としてのプライドだからね」
綴る言葉の内容にそぐわない優しい声音。
「僕は、人間である前に科学者だから」
穏やかに微笑んでスザクの瞳を真っ直ぐに見る。
「これは、人間らしさを捨てた代償なんだよ」
何かを、言おうとしてスザクは結局何も言わなかった。
自分に必要な言葉はもう、何も無いのだから。
言葉掛けて欲しい、全て理解されて優さに溺れた人はもう居ない。
もう会う事も出来ない。
………だって、自分が殺すのだから。



あきゅろす。
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