[携帯モード] [URL送信]
TURN6.13















「へっ?…ぅわ!」
パァン!
素っ頓狂なジノの声と乾いた音が空に響く。
「な、なに?!アーニャ…??!」
茫然と地面へと尻もちを付いたジノをアーニャが絶対零度の瞳で見下していた。
ジノの後ろを歩いていたアーシャの脚が閃いて膝裏を蹴り飛ばし、上体が崩れた所に渾身の張り手が繰り出されるのを俺は止めるでもなく見ていた。
確かにアーニャの身長ではジノの頬は張り飛ばせないから、妥当な手段という所か。
「それだけ?」
モルドレッドの4連ハドロン砲の反動にも耐えうる、訓練されたアーニャの体重の乗った一発。
いや、二発か。
早くも赤い手の跡がくっきりと浮き上がり始めているジノの頬のダメージは華奢な体から与えられたものだと思えない程に強烈だった。
「ってぇ……だから、何そんなに怒ってるんだよ?」
頬を抑えながら緊張感のないジノの問い掛けが、更にアーニャ機嫌を悪化させる。
馬鹿な奴。
「ぅあ……!!」
座り込んだままで、丁度アーニャの目の前にあるジノの鍛えられた腹筋が容赦なく蹴り付けられる。
「手加減して、負けて?」
身を折って顔を歪めるジノの前髪を無造作に掴み上げるのさえも、無表情でやってのける彼女の怒りの強さは言うに及ばない。
「遊んでて、モルドレッドの頭を土足で踏ませたの?」
常ならば感情を表に出さない為に、その表情の変化はより強調される。
「っ……悪かったと思ってる」
強制的に視線を合わせられたアーニャの瞳に宿る殺意にも似た感情を漸く理解したらしい。
「言いたい事は、それだけ?」
的を得ない言葉にアーニャがジノの髪を更に捩り上げて、反対の拳を握りしめたのを見とめたジノが流石に慌てる。
「いだだだだだっ!!今度はっ、真面目にやるって!!」
抵抗するジノに漸く、アーニャの細い指が離れた。
「次は、ないから」
「わ〜ったって!!」
反省の色が無いジノに対して諦めの色が瞳に浮かび、薔薇色の唇から溜息を零しつつも、何も言う事は無かった。
僅かに振動した携帯端末を取り出して、歩き始めた後姿を見てジノがあからさまに肩の力を抜く。
全く、反省していないのは確かだろう。











「っ、ぅわ〜コレしばらく跡残るって!いってぇ〜!」
更衣室の鏡に映る腫れ上がった自分の頬を押さえてジノが呻く。
「後方支援型のモルドレッドに対する攻撃を防げなかったのは前衛のジノ、お前の責任だろ」
「だからって、何も殴らなくたっていいと思わねぇ?アイツが過激なのはいつものコトだけどさ。」
確かに……やり過ぎの感も否めないが。
「戦場で次はない。あの発言は軽率だったと思う。あのまま攻撃されていたら死んでいた可能性もある。」
「そぉかぁ?結局殺やられなかった訳だし。それでいいんじゃねぇの?」
さも楽しそうに話す、それが戦争のただ中であろうとも。
無邪気にゲームの様に任務をこなすジノの考えが無性に腹立たしく思うのは、俺がイレヴンだからという訳ではないという事か。
「俺はアーニャが正しいと思う。ジノにとっては遊びでも大多数は……少なくとも俺はそうじゃない。……そういう考えには吐き気がする。」
ジノに感じていた違和感の正体。
苦労した事がない人間の天真爛漫さと傲慢さが。
「……そう言うお前は、何に動揺してランスロット傷付けるハメになったんだぁ?ヘッドパーツへの攻撃、お前なら完璧に受け流せた筈だぜ?」
「……言う必要はない」
「おい、待てって」
ジノの問い掛けにそれ以上答える気にもなれなくて、無視して先に出る。
向かうのは自分の専属となった技術部。
壊したランスロットにショックを受けているであろう、後見人に謝る言葉を考えながら。
まだ俺も割り切れていないらしい、と苦い自覚を無視して。
「言いたくない……か。ちょおっと、マジになりそうかも。」
ジノの独り言は誰も聞く事は無かった。



知らぬが仏?


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[グループ][ナビ]
[管理]

無料HPエムペ!