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朝の研究所内。
「あれぇ?ここに作って置いてあったチョコ、食べちゃった?」
ロイドのゆっくりとした声がスザクに問い掛けた。
「あっ!すみません……ってあれロイドさんが作ったんですかっ?!」
「ちゃんとチョコレートの味、したでしょ?」
「……あー……はい…」
そういえば、ちゃんとチョコレートの味がした。
「ふふっ…それ、セシル君には内緒にしといてねぇ〜」
「はい…」
「あ、君の仕事は今日はもうないからぁ。」
「えっ?」
仕事を、もとい研究を愛するロイドの口から信じられない言葉を聞いて思わず聞き返す。
「おめでとぉ〜」
ひらひらと手を振っていつもの真意の見えない笑みに嫌な予感がする。
「まさか俺、大切なチョコ食べちゃいました??!」
「ちがうよぉ?まぁチョコ食べたのが原因だけど。………通常値じゃないとデータ取っても仕方ないしねぇ…?」
「あ、の……チョコに何か……?」
「味にも影響無しかぁ。うん、完璧だな。」
スザクの疑問をあからさまに無視し、ひとりごちる。
「ロイドさんっ!?」
「遅効性だから学校には行けると思うよ?」
「〜〜〜っだから一体なんなんですか!?」
「行ってらっしゃぁ〜い」
「……イエス・マイロード」
にっこりと下される命令に俺はそう答えるしかなかった。


















「っ…何、が遅効性だ……!!」
3時限目を知らせるチャイムが澄んだ空に響く。
頭に霞が掛った様に朦朧として意識が一つに纏まらない。
コレはセシルさんの作ったモノよりタチが悪いっ!
心中で毒づくがそんな事すら脳内に留まらずに霧散して思考が崩れていく。
一体何の為に作ったものなのか、考えたくもない。
絶対コレ、悪意じゃなくて殺意だろ………。
冷たい風が吹き抜けて体温の上がり過ぎたからだを一瞬冷やして去って行く。
意識の混濁、体温の上昇……これは明らかに催淫効果だが、強すぎるだろ。
自らの状態を意識が途切れそうになりながらも分析する。
拷問用に作ったんですか、ロイドさん……。
しかも季節に合わせてご丁寧にチョコに仕込むあの人の神経の異常さはもはやコメントのしようが無い。
俺はあの人が突然生物兵器を作ったとしても驚かない。
バレンタイン当日にこんな事になろうとは。
一体、俺が何したって言うんだ。










Aphrodisiac









憂鬱な気分で登校すれば、会長主催のバレンタイン祭が朝から行われていたのは予想通りで。
各種チョコレートが大量に学園に溢れ、噎せ返る様な匂いを充満させる教室でスザクは体調の異変を感じた。
「ちょっと、スザク君大丈夫?」
ぐにゃりと世界が歪んで上体のバランスを崩したのをシャーリーが見つけて肩を支えてくる。
「っ…大丈夫だよ。チョコの匂いに酔ったかなぁ?ちょっと外出てくるね。」
無遠慮に他人に触られる感覚に虫唾が走る。
今にも振り払ってしまいそうな衝動を抑え込み、にっこりと笑顔で取り繕いながらシャーリーが触った肩に走る不快感を隠した。
「そう?」
他のメンバーに見つかって騒ぎになる前にと、その場からこっそりと抜け出す。
お祭り騒ぎの学園内だが、それゆえ人の少ない場所も出来る。
人の気配が無い方向を選んで進めばいつも通りの屋上の扉の前に来ていて、軋むドアノブを回して屋上へと出る。
他人の気配さえ煩わしく、いつもの自分さえ演じられないようでは屋上に来て正解だった。
構わずにコンクリートの床に転がる。
冷えた床がこれ程有難いと思った事はない。
このまま休めば少しは納まってくれるだろう事を願って瞳を閉じた。
「スザク?」
あぁ、これはツイているんだか最悪なのか。
目を閉じていてもその良く通る声は聞き間違える筈がないに決まってる。
何も知らない生贄が近づいて来るようにしか思えない。
ルルーシュの存在を感じた途端に湧き上がる強暴な衝動は真っ白に頭を塗り潰して本能のままに襲い掛かれと命じる。
甘美で強烈な欲求。
だからここに来たっていうのに。
バレンタインという賑やかで且つルルーシュが巻き込まれる可能性の高いイベントを逃れたいと思った結果、屋上に来る可能性も高かったが全ては今更だ。
「久しぶりに学校に来たと思ったらサボリか?…スザク?どうした?」
呆れていた声が不審に変わる。
「おい……」
冷たく、細い指先が頬に触れた瞬間にルルーシュの折れそうに細い体を抱き締めていた。
「ルルーシュ……ごめん、助けて………」
きつく抱き締めて、首元に熱い吐息を零すとルルーシュの抵抗が止んだ。
助けを求められれば放っておけない性格なのを知っていて、そう言ったのだから。
「全く…お前の職場環境は一体どうなってるんだ…」
「いい…人達なんだけど。た…まに、こんな事が………」
かろうじて残っている理性で会話を続けるが、もう自分が何を言っているのか分からなくなって来た。
「何できちゃったかな…せっかく離れたのに」
「放っておける訳ないだろう」
そう言うルルーシュは酷く楽しそうな表情を見せて、言葉を続けた。
「おまえの弱っている所なんて、そうそう無いからな」
「……後悔しても知らないよ」
その衝動を抑えようと抱き締めた腕に力を入れて耐えればルルーシュの身体が一瞬強張って、そして柔らかく解けた。
「望む所だ……」
日の光をスザクから遮る様に口付ける。
火照った身体に冷たい唇がそっと触れる誘惑に我を忘れそうだ。
「ル、ルーシュ…」
見上げれば微かに濡れ始めているアメジストの瞳。
「っは、随分と元気じゃないか。」
昂った下肢の形を辿るようにゆっくりと撫で上げられ、普段ならばやり過ごせる筈の刺激に息を詰める。
「苦しいんだろう…?」
そう吐息で問い掛けられるとは思わず、ルルーシュの顔を見る。
「今、助けてやる……」
普段は決して自ら言わない言葉と同時にベルトを細い指が緩めて来たので流石に驚く。
「ちょっ……ル、ル?」
本気なのかと問えば赤い唇が挑戦的に微笑み、ゾクリと背中に電流が走った。
「こんなお前に抱かれたら身が持たないからな。…一度、抜いてやる」
高慢な皇子は瞳で微かに微笑み返すと僅かに開いた唇を赤い舌でちろりと舐め上げる。
「っは…珍しい、ね。ルルからなんて」
高いプライドを持つルルーシュが目の前に跪く姿はそれでなくても征服欲を誘う。
既に形を変えているそれにゆっくりとルルーシュが口付けた。
「んむ……っいつも、は…お前が無理矢理やらせるからな…ん……」
先走るスザクの精液を舐め取り、繊細な指が熱を増す陰嚢を弄ぶ。
「っ、上手い、ね…」
漆黒の髪に絡めていた指に力を込めるとルルーシュの瞳が向けられる。
「……ん、…いつもより、早いじゃないか…」
目元を朱に染めてうっとりと眼を細め、乱れる自分を満足そうに見上げてくる。
獰猛に勃起したペニスが赤い唇に飲み込まれるのを見ればぞくりと腰が震えた。
「そうだね……じゃぁ上品に舐めてないでもっと奥まで咥えてくれる?」
こちらの反応を楽しむその余裕を剥ぎ取ってやりたくて喉の奥まで突き入れれば狭い粘膜に柔らかく引き絞られる。
「っふ……んー!」
目に大粒の涙を溜めて苦しさに眉を顰めてなお、きつい視線で挑発する態度に狂暴な欲が膨れ上がった。
咥内を蹂躙するそれにルルーシュの真珠色の歯が亀頭に当たり、弾けた。
「――――――!」
教えた通り、従順に唇を離さず全てを飲み干す姿は堪らなく淫媚だ。
「っ……ん…ぁ…どうだ…?」
残滓の残る唇を拭いながら問い掛けられても。
「逆効果だろ…」
跨るルルーシュの下肢を足で押し上げれば軽い体が浮き上がる。
「ぁっ…は……俺はいいっ…!」
「そんな事言っても、こんなになってるけど?」
兆したそれに膝が当たる様にすれば面白い程に体が跳ねる。
「やめ…ぁうっ……!」
一度劣情を吐き出して熱が冷めるどころかルルーシュの存在自体に煽られ、そのしなやかな身体に襲い掛った。







「おはようございます…ロイドさん……」
「おはよぉ〜あれぇ?枢木准尉どしたの?調子悪そうだねぇ」
「当たり前ですっ!勝手に自分が食べたとはいえ、あの致死量に近い薬入りなんて!!」
「ん〜?………あぁ、君モテそうだもんねぇ」
意味深な笑いを湛えてロイドがしきりに納得する。
「はぐらかさないでくださいっ!」
「アレ自体はホントに軽いヤツだよ?ただちょーっと改良してねぇ。チョコレートの成分、つまりカカオに反応するんだよ」
「チョコレート…」
「そ、だから薬自体の摂取量は少なくてもチョコレートを食べれば食べる程効果が強くなるってワケ♪」
「昨日、あれからチョコ沢山食べたんじゃない?」
「あ……バレンタイン祭っていうのでたくさん…」
「あはぁ!相当食べちゃったみたいだねぇ。ま、イイ事もあったんでしょ?」
「うっ……それは、まぁ…というか本当に紙一重でしたけど」
「あら、スザク君おはよう。」
「おはようございます、セシルさん」
「丁度良かったわ!コレ、一日遅れちゃったけどバレンタインチョコ、作ってみたの。良かったら食べて」
「あ…有難う御座います。」
昨日の薬入りチョコを思えば変な物が入っていようが怖くない!
「っ……!!!!!セ、シルざん……こ、れは…!」
「えぇ、梅干し?っていうのがエリア11で人気だって聞いたから入れてみたの」
その言葉を聞いた瞬間に意識が遠くなり、俺はとうとう気を失った。







Happy Valentine Day ?




あきゅろす。
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