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そこは誰も行く事の出来ない場所
苦しみも悲しみもない小さな箱庭
僕の為だけに笑って
僕だけが触れられる
愛しい君



Identity-Crisis




その場所に辿り着くのに毎回違う道を選んでは長い道のりを、時には同じ道を何度も巡って。
絶対に知られる事の無いように。
かつて。
街と言われていた廃墟の迷宮を抜けてその場所に辿り着く。
何重にも施された扉のロックを外して、その中へと入り込む。
「ただいま、ルルーシュ。」
そこは病的なまでに白い壁が支配する無機質な部屋。
装飾は一切ない。
その空疎な空間が支配する中で、唯一つの存在へと呼び掛ける。
「…すざく」
その声はずっと前から知っているのに自分の名前のイントネーションが微妙に違い、僅かな歪みを感じさせる。
扉の音で来訪を察したルルーシュは、まるで迷子のような瞳で僕を迎えた。
「ごめんね。遅くなっちゃった。」
その言葉に小さく首を振って、傍まで来るその行動は幼子の様で。
「………」
抱き寄せれば、何も言わずに縋りついて来る。
また、寂しい思いをさせてしまった。
「ちょっと寄って来た所があって……」
もう、そんな事はしないと決めたのに。
自責の念に駆られながらも、柔らかく声を続ける。
「これ。誕生日おめでとう、ルルーシュ」
「これは……なんだ?」
目の前に差し出したケーキを不思議そうに見つめて真剣に悩んでいるようだ。
そんな様子に苦笑しつつ、ルルーシュの疑問に答えてやる。
「これは、ケーキ。今日はルルーシュの誕生日だからね」
これも、ルルーシュの記憶に残っていないものだろう。
「たん、じょうび?」
あの日から、全ての記憶を失ったルルーシュ。
自分の名前はおろか日常生活に必要な事さえ全て覚えていない。
「そう、ルルーシュが生まれてきた日だよ」
それを知った時。
このまま忘れてしまえば良いと思った。
だから。
「おめでとう……って言うのか?」
何も知らないルルーシュをここに閉じ込めて。
それから注意深く全ての情報を排除して、記憶を呼び起こす切っ掛けを与えないように。
「あはは、それを言うのは僕の方。…はい、食べて?」
フォークに刺して差し出せば、教えた通りに従順に口を開く無垢なルルーシュ。
「生まれて来てくれてありがとう」
素直に柔らかな体を預けて来くるルルーシュをかき抱いた。
「すざく」
細い指がそっと背中に置かれる。
その抱き締め返す仕草は、記憶を失う前のルルーシュと同じで。
自分の知るルルーシュを見つける度に嫌な予感を打ち消している。
だけど。
不安が付き纏って離れない。
「ルル……いい?」
瞳が意味を理解したのを示すように見開かれ、そして了承を瞼を震わせて微かに頷く事で伝えて来た。









「っ…ふ、はぁ…ん」
苦しい癖に、眉を寄せながら舌を積極的に絡めて来るルルーシュはいつも必至に何かに縋っているように思う。
「そんなに慌てなくても、大丈夫だから…」
背中をゆっくりと撫でながら宥めるけれども、しがみ付く手は強く握りしめられるばかり。
記憶を無くしているという漠然とした不安はあるのだろう。
「ふぅ、ん……」
絡められるルルーシュの舌をそっと吸い上げれば甘く腕の存在が震えた。
腕の中の華奢な体は暖かく、それを壊さないように優しく抱き締める。
こんなにも腕に馴染む程に抱いたその体は、けれど今も消えてしまいそうに不安で。
どんなに大切に囲っていても、いつか自分が壊してしまいそうで、怖い。
壊してしまいたい程に愛しくて、どうしようもない程大切だから。
苦い気持ちで甘い舌に応える。
以前のルルーシュも理性を手放せは同じように必至に求めて来た。
強がっている癖に無意識で人に縋りたいのを我慢していたルルーシュのその姿がやるせない。
ここまで脆く、傷つきやすい事を押し隠して生きて来なければならなかった事。
そしてそれを追い詰めて、壊したのは他ならない自分のせいだ。
ルルーシュの纏っているシャツのボタンを一つ一つは外して、肩口に手を入れ床に落とす。
優しくされたいのに、優しくされる事に慣れないルルーシュは丁寧な愛撫を施すだけでも酷く怯える。
最初は行為に対して怯えているのだと思ったけれど、それは人の体温よりも以前に当たり前に与えられるべき優しさの受け取り方が分からないから。
ただ、傷つけたくない。
優しくしたいだけなのに、俺はルルーシュに本当にそれを与えられているのだろうか。
そう自問しても、答えはこのルルーシュを目にしては全てが言い訳になる。
全てを奪い取りたいという狂暴な感情が渦巻いて、ルルーシュを食らい尽くしてしまう。
そして今も。
「ぁあっ!」
仰け反って眼前へ差し出された赤く熟れた突起を吸い上げれば甘い悲鳴が上がる。
微かな抵抗を見せた腕と強張った体は次の瞬間、柔らかく崩れ落ちた。
背中を支えている片手に力を込めてそれを支え、舌先の突起の感覚に酔う。
自分の癖のある髪を細い指で梳いて引き寄せられるのが心地いい。
「ぁ、す…ざく…ぅ」
もっと声を聞きたくて、口付けている方と反対の突起へと手を這わせれば甘い声が更に漏れる。
「ぃ、や……そこばっ、か…っ!」
椅子に座ったままの僕へと乗り上げている不安定な体制で揺れる体が強請って下肢を擦りつけて来る。
「こっちも欲しいの?」
既に勃ち上がって震えているそれを緩く扱きあげれば、寄せる快楽を素直に受け取る。
取り繕う事をしない表情はルルーシュの整い過ぎた美貌のバランスを崩し、幼げで今にも壊してしまいそうな危険な魅力を放つ。
「ほしっ…ぃっあ、ん!」
快楽に溺れてからでないと、自分の欲しいものさえ言えないルルーシュが切ない。
「ひっぁ!一度に触っちゃ……ぁ!」
先走りで濡れた指を更に奥まった場所へと塗りつければ一際高い声が上がる。
入口を撫で上げた後、ゆっくりと指を沈めていく。
「ぁあ、あ!」
その感覚を震えながら耐えていたルルーシュがある一点を故意に押し上げると短い悲鳴を上げる。
「イイんでしょ?」
わざと口に含んだままの突起に息が掛る様に問い掛ける。
甘い悲鳴が零れる度にルルーシュの内は指を締め付けては震えながら、しかし柔らかく融けて誘う。
「あっ……や、めっ…んぁあ!」
指が増える程に素直に反応するルルーシュが愛しい。
髪を振り乱して逃げようとしても自分に乗り上げているルルーシュに逃れる術はなく、ただ行き場のない感覚を体を犯され震えているしかない。
「もっ…お願い…だ、から…!」
イかせて………
吐息に混じった哀願。
紫の瞳も濡れて一際大きく見える。
「いいよ」
「は、ぁん…ぁあ――――――!」
扱き上げると同時に胸も強く吸い上げれば、あっけなくルルーシュが果てた。
全身の力が抜けて、くったりと体を預けるルルーシュの表情を覗き込めば完全に快楽に支配されて夢の中にいるような表情で見返してくる。
「ルル…おいで」
力の入っていない体をふわりと浮かせて、既に溶け切った秘部へと欲望を突き入れる。
「ぅ、く……ふ、ぁああ…!」
自重で最奥まで貫かれたルルーシュは震える手で必死にしがみ付いてくる。
ルルーシュが息を整えようと不自然な呼吸をする度に、内部の不規則な締め付けに煽られる。
「ルル、大丈夫?」
中の存在を感じて、ただそれだけで乱れていく体。
「だ、いじょうぶだからっ……は、や…くっ、ね…動いて……」
些細な事さえ、快楽として拾い上げる体は、一体どれだけの男に体を開いて来たのだろうと、そんな暗い嫉妬さえ覚える程に淫蕩で。
「ひっ、く……す、ざく…ぅ…」
それでも動かないと分かると強すぎる快感にぽろぽろと涙を零して、腰を揺らめかせる。
「ゴメンね。」
艶のある黒髪を撫で上げれば、いつもならばルルーシュより高い体温の自分の指先に熱を伝えて来る。
泣き腫らして少し腫れぼったくなった目元を細めて手に顔を擦り寄せてくる。
そのまま引き寄せて唇を奪って、勢いよく突き上げる。
「んくっぁあっ!」
望んだ刺激に歓喜の声を上げて顔を仰け反らし、体が弓なりに撓るのを背中に回した手で支え、煽情的に背骨のラインを撫で上げれば戦慄き惑乱する。
「…はぁ……いいっ…は、ぁん」
体を強引に動かしながら浅い部分を抉る。
「ひぁっ、あ、あ―――!!」
快楽を上手く逃す事の出来ないルルーシュは続け様に来る快楽の波に翻弄されて、何度も高みを極めてしまう。
「っ、ふ……ぃや、も…う…」
それでも、中途半端な快楽を拾い続けて上り詰める事の出来ず、体力を削がれていくルルーシュは弱く縋りついて助けを求めて来る事しな出来ない。
そう教えたのは僕だから。
震える指先が背中に爪を立て、何度も滑っては切なく顔を歪める。
もっと、僕を欲しがって。
「っ…ルル」
キツイ締め付けに持って行かれそうになるのを歯を食い縛ってやり過ごし、動きの取れない椅子から目の前のテーブルへとルルーシュを押し倒した。
「あん…っあぁ!」
縋るよすがを求めて彷徨う指先を捕まえて、強く抱き締めて更に繋がりを深くすれば安心した顔を見せて、素直に快楽のみを追う。
「はぅ、…んぁ、あっ……!」
「好きだ…」
部屋に響く音が粘度を増す毎に、霞が掛ったように思考が鈍くなって目の前の存在だけが全てになる。
火照った頬に口付け、荒い欲に擦れた吐息で繰り返し意味も無く繰り返す。
……その言葉の本当の意味も知らないくせに。
「ルル…っ…愛してる……」
「ぅ…はぁ……お、れも…愛して…っひ、ぁあ!」
意味を知らないと分かっていながら、それでも途切れ途切れに返される言葉に思考は白く弾ける。
「ルル…っルルーシュ……!」
その衝動のままに貪れば、か細い悲鳴を喉から零して涙に濡れた瞳と合えばもう、何も考えられずにルルーシュを奪って自分の快楽を求める事しか出来なくなる。
「やぁぁあ…っぁ、あ――――――!!」
腰を大きくクラインドさせ、ルルーシュの弱い場所を強く突き上げれば殊更強く締め付けられて、最奥に劣情を注ぎ込んだ。









砂時計のようにさらさらと足元からゆっくりと、優しい嘘がこの関係を壊そうとしている。
それでも、もう少しだけ罪から逃れさせて下さい。
憎んで、存在を否定する事でしか執着する事を知らなくてゴメン。
こんな壊すだけの愛しかしらなくてゴメン。
それでも、愛する事を止められないのは僕の罪と罰だから。





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