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ただ、寝顔だけでも見たくて。
そんなの言い訳だけれど。
「こんな夜更けに、どうした?」
軍で否応無く習得した気配を完全に消す方法で忍び入った部屋。
もう眠っているであろうと思われた部屋の主から声を掛けられる。
「起きてたんだ。」
大きく切り取られた窓に浮かぶ銀の月に細いシルエットが浮かび上がり、
常ならば何気ない風景を幻想的にさえ映し出す。
「ああ」
見慣れた部屋に見慣れる事の無い美貌の主が高慢にベッドに佇む。
微かな驚きを隠せず、問い掛ければ至って素っ気無い返答が返された。
「君の部屋を訪ねるのに理由が必要かい?そうだな、君の顔がどうしても見たくて。
って理由じゃ駄目かな?」
ゆっくりと、組み直される細く長い足。
「ふん、そんな使い古された理由が通るとでも?」
そのベッドに寝乱れた跡が無いのは自惚れてしまうに充分な理由。
「僕は君みたいに上手く理由を言のが、苦手なんだ。」
首を竦めて降参の合図。
「それは、俺が嘘を付くのが上手いと言っているのか?」
一歩ずつ、ベッドに近付いて行く。
「そう言わないでよ。勉強で君に勝てた事、僕にある?」
気付いているだろうに、近付く事を指摘しないのは。
「否定はしない、がな」
拒んでいない、という分かりにくい彼なりの意思表示。
「今日ユフィの………騎士に、なったんだ」
誇れる事である筈なのに。
どうしてか、その一言を告げるのに罪悪感が伴う。
それも自惚れではない、そんな確信。
確信を確証に変えたくて、君にこんな事を言ってしまう狡い俺。
「知ってる」
幼少期から、空白があるとはいえ長い付き合いと言っても良いだろう。
些細な変化も見逃さないように見つめていても、高価な宝石の煌めきを返す瞳と、
まるで計算され尽くした人形のような造形に反応は無い。
そんな彼の思考は、理論的であると同時に酷く不安定で読み切れない。
「それがどうした?俺とお前には関係ないだろう?」
首を傾げて、唇には此方の反応を面白がるような、笑み。
「そう、だけど………」
そんな笑みを零す時は君が強がっている時だから。
綺麗な瞳の奥に隠された本心は何処にあるか必死で探すんだ。
「用件があるなら早く言ってくれないか?俺は眠りたいんだが。」
冷たく突き放す声。
殆どの人間は騙せても俺は騙せないよ?
「証明したかったんだと、思う」
自然と騎士拝命と同じ姿勢でルルーシュの元へ跪く。
「………何を」
微かな間を持っての問い。
やっぱり。
まだ、心の隅で疑っている君がいる。
「君を、愛してるって………」
だから、いつもより潜めた低い声音で、誤魔化す事を許さない。
声に出して全てが君のものだと。
それが伝えたかったのだと名を呼ぶ。
「ルルーシュ………」
膝頭の後ろを持ち上げ、もう一方の手で足を支えるようにそっと添える。
すべらかな足へと縋るように顔を近づけて返答を待つ。
未来永劫変わらないものなんて無いと、もう知ってしまっているけれど。
この気持ちを否定したくない。
守っていきたい、から。
「………知っているさ」
小さく、頭上から降って来た言葉は傲慢になり切れない優しさを伴い、胸を締め付ける。
ああ、何て愛しいのだろう。
俺だけが知っている、知られたくないルルーシュ。
「まぁ、任命式でソコをこんなにしてはいなかっただろうしな?」
するり、と支えていた足が手から逃れて熱を持ち始めた脚の間へ擦り付けられ、爪を立てる。
「っ……ルル」
見上げれば妖しく顰められた瞳を細い指が辿り、薄く開いた唇に這わせて微かに顎を上げる。
下肢を辿られるのと同時に自身の指を舌で濡らす、眩暈がしそうな淫靡な挑発。
形の良い足を見せつける様にゆっくりと、体を辿られる。
「証を」
つい、と足で顎を上げられ、高慢な瞳と交差する。
「イエス、マイ…ラヴァ……」
躊躇う事なくアメジストの瞳を捉えたまま、足の指へと舌をゆっくりと這わせていく。
濡れた音と、微かに揺れる紫。
伸び上がり、漆黒の髪を掻き揚げて。
耳元へと愛の言葉を、君へ。
証を体に、刻み付けさせて。





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