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 罪と指輪 (真空)




「愛してる」

聞いてはいけない。

「おまえだけだ」

目を合わせてはいけない。

「空」

応えてはいけない。
なぜなら、これは罪だから。

「…帰ってくれ」

震える声を抑えて、それだけ言うのがやっとだった。
本当は逃げ出したい。この強引な男がぶつけてくる感情は火傷しそうに熱いから。

「頼むから、帰って…」

逃げれば追って来る。
それでは駄目だ。自分から引かせないと終らない。

「何をそんなに怯えているんだ?」

「怯えてなんか…っ」

思わず男の顔を睨み付けて、そこから視線が外せなくなった。
揺るぎない、自分以外の何をも映さないその眼差しに囚われて。

「オレのことが好きだろう?」

瞬きさえ見逃さず絡んでくる視線。いつの間にか掴まれた手首。

「離せよ」

「大丈夫だ、空。これは罪じゃない」

「え…」

薬指を咥えた唇が、指輪を抜き取ってゆく。
後ろ手に壁に放り、響いた金属音が止まないうちに抱き寄せられた。

「罪じゃない」

「…っ」

「好きって言えよ。もっと自由にしてやる」

触れそうに近い唇から
腰に食い込んだ指から

「兄ちゃ…」

恋が流れ込んでくる。


end.
20060928





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あきゅろす。
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