気付いたら始まってた恋だけど
気付いたら終わってた。
なんて、そう簡単には いってくれないみたいで。
談話室には私とユウ、2人きり。
「別れたの」
「またかよ、お前これで何人目だ」
何事も無かったかのようにあっさりと言う私にユウは呆れているみたいだ。
「どうせまたお前がふられたんだろ」
そう言われ、ちょっとムッとする。
「そうだけど、‥なんで分かったの?」
「いつもそうじゃねーか、それにお前 相手の事付き合ってても好きじゃねぇだろ」
「、そんなこと ない、スキだよ」
「相手の事見てもいねぇ癖に好きだなんて言えんのかよ」
ユウ今日はよく喋るね、なんて笑いながらおどけてみせたけど、驚いた。そこまで気付かれていたなんて。
(嬉しいけど、複雑)
「どうして好きでもねぇのに付き合うんだよ」
「それは‥」
(貴方が、好きだから。でもそれは、叶わない事だから)
「“それは”何だよ」
「ー‥何だろうね」
意味が分からないといった風にユウは眉間に皺を寄せている。
私が、男の子と付き合う理由はいつも同じ。その人がどことなくユウに似ていたから。ユウには大切な人がいて私じゃ駄目。だから、せめて一瞬でもユウと重なる人と一緒に。でも、だからか ふられる理由もいつも同じだった。「君は、誰を見てるの?」って。やっぱり結局はユウに似ている誰かじゃ、駄目なんだ。
「お前、他に好きな奴いるんだろ」
「‥‥‥、」
そう言ったユウに私は何も言い返せなかった。押し黙ってしまった私を一瞥すると、ユウは自分の部屋へ戻るのか立ち上がった。
「お前が誰と付き合おうが勝手だが んなことしてても、本命は手に入んねぇぞ」
去りぎわにそう吐き捨ててユウは談話室を出ていった。
「そんなこと、最初から分かってるよ」
でも、仕方ないじゃない。本気で好きな人は貴方なんだから。それに、伝えてしまったら、この気持ちは。 1人になった談話室がやけに広く感じた。
「ユウ、好きだよ」
そう呟いた言葉は、空気に散って消えた。それは、まるで、
私の恋の様だった。
誰かの背中に、君を重ねる
素敵企画:I wish様に提出。参加させて頂きありがとうございました!
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