とか、朝から機嫌良く鼻歌なんか歌ってた。 部活でも互いのノールックパスが面白いほど通り 『お前とハイタッチし過ぎて掌が真っ赤だ!』 なんて、笑ってた。 今だって帰り道の誰もいない公園で 『すげぇすげぇ満開の夜桜だ!』 って喜んでた。 今日のお前はご機嫌だった。 風が急に吹くまでは。 「はあぁ…」 桜の花びら散るたびに、お前の溜息がまたひとつ。 「俺、桜になりたい」 突然のお前の変容についていけない俺は、きっと曖昧な笑顔を浮かべている。 「お前、風だから」 俺が風? 「確かに存在するのに、見えなくて」 俺がたま?に部活サボって、ふらっといなくなることに対する苦言? 「お前が、嬉しいとか嫌だとかどうでもいいとか、何を思ってるか、わかんねーんだよ。でも、あのいっぱいの花びらがあれば、風が見えるだろ? 風が強くても、弱くても、例え渦巻いていても、 春の風が優しくて温いのも。 だから、俺、桜になりたい」 越野…? 「見えない風にも見えるといいな、花びらの形。 じゃ、また明日」 部屋に帰りついた俺の胸ポケットに舞落ちていた、綺麗な薄紅色 桜の花びらは、心の形 俺の心と同じ形だった [グループ][ナビ] [HPリング] [管理] |