絵⇒如月 歌
文⇒Vegetable・bacon
いつもと違うチーム編成での任務を終えた遠征帰り、バーダックは一人酒場に向かっていた。
別に文句があるというほど成果が悪かったわけでもないが、妙に違和感を覚え、戦いを終えた後の高揚感を感じられらない。
酒でも飲んでスッキリするに限る。
次の遠征はまた慣れたメンバーで向かうことが決まっているのだから、いつまでもこだわる必要がないのは分かっていた。
一人黙々とグラスを開けているところに厚かましく割り込んできた不愉快な男と同席する羽目になった気もするが、いつになく酔いが回るのが早く、記憶は定かではなかった。結局、閉店間際まで飲んでいたバーダックは、少々ふらつきながら自宅へ飛んで帰った。
「――?」
玄関を開け、戦闘ジャケットを適当に脱ぎ捨ててそのままソファに倒れ込もうとした直後、装着したままのスカウターが第三者の存在を告げる。遠征に出ているはずのラディッツが予定より早く戻ったのだろうか。だが、スクリーンに映った戦闘力はラディッツのものより明らかに大きく、ごく近くで二つ存在している。しかも、誰とも知れぬ輩は疑う余地もなくバーダックの部屋にいるらしい。
下級戦士とはいえ、バーダックの戦闘力は決して低くはない。にも関わらず、彼の留守中に、それも自室へ無断侵入してくるのだから、相当ふてぶてしい相手と考えた方が良さそうだ。
バーダックは一旦キッチンへ向かい、冷蔵庫から冷えた水を出して一気に飲み干して酔いを強引に追いやると、眉間の皺を深くして真っ直ぐ自室へ向かった。
ピピ…ッ。
ロックが解除され、扉が左右に開く。
薄暗い部屋へ一歩足を踏み入れると、バーダックに気付いた男たちが同時に振りかえった。
「遅かったな。」
鼻で笑う声には答えず、ベッドに近きながら照明のスイッチを押す。
「――ッ!?」
明るくなった部屋から非常識な侵入者を引きずり出そうとしたバーダックは、揃って自分を見つめる男たちの顔を認識すると、驚愕のあまり完全に言葉を失ってしまった。
「随分驚いてるみたいだぜ?」
「そりゃそうだろ。――オレ達だって状況はよく分かってないんだからな。」
「ま、そうだな。……だが、これで問題は解決だ。」
ベッドの上にいる二人の男は、バーダックの驚きを明らかに楽しみながら言葉を交わす。一人の膝をもう一人が跨ぎ、真正面で向かい合った体勢で挑発的なな笑みを浮かべている男たちの眼には、姦計を感じさせる光が宿っていた。
「突っ立ってないで来いよ。――ビビる必要はないだろ、オレもこいつも…見てのとおり、てめぇ自身なんだからな。」
「あり、得ない……っ。クソっ、何なんだ、これは!」
跨った男のスーツをずらし、尻尾の付け根を撫でながら話す男の言葉で我に返り、漸くバーダックの思考が動き出す。だが、混乱は少しも改善された訳ではない。
それもその筈。バーダックのベッドで身体を寄せ合っている男たちもまた、疑う余地なく彼自身なのだ。
サイヤ人の下級戦士は元々タイプが少ない。だが、似ているというレベルの話ではなく、頭が割れそうな混乱の中にあっても目の前にいるのが自分だということだけは否定できない。全身が総毛立つ感覚が、理屈を超えて事実だと伝えてくる。
「ドッペルゲンガー…とでも思えばいいだろ。」
「アホォ。縁起でもないこと言うな。そいつが見えると死期が近いらしいぞ。……知らないうちにクローンでも作られてた、とかの方がまだマシだ。」
「理屈より、楽しもうぜ。なぁ、……バーダックさん、よ。こんな面白い状況なかなかない。ただ、どうも……同じ人間だからだろうが、さっきから折り合いがつかなくて面倒になりかけてたところだ。」
「てめぇが大人しく従えばいいんだ。」
「な、分かっただろ?」
尾の付け根を執拗に愛撫され、僅かに頬を紅潮させた男は、彼も見紛うことなくまたバーダックとまったく同じ容貌をしていた…が、冷や汗を滲ませて棒立ちになっているバーダックにニヤリと意味ありげな笑みを向けた。
「何が、分かるっていうんだっ。折り合い、だと?てめぇら、いったい何を……っ」
動揺を隠そうとしても、声が震え、言いようのない嫌悪感がバーダックの喉元までせり上がってくる。
「どっちが先にヤルかってことだ。」
「な、に……ッ。」
「どうやら本体はそっちらしい。だったら、オレたち二人はあんたと元通り一つになってやるよ。」
「つまりは、ヤラせろってことだ。」
「ふざけ…る、なっ!!誰が、好き好んでてめぇと同じ顔にヤラれたりするかっ。」
叫んだ瞬間、デジャブのように酒場の喧騒が甦り、同じテーブルで飲んでいた男に吐いた台詞が鮮やかに脳裏に浮かぶ。無言でバーダックを見据えていた男は、薄い唇を歪めて笑った。
「――ふぅん。この顔がほんとに嫌いかどうか、試させてやるよ。今夜を楽しみにしてな。」
あの後、酒の中に怪しげな薬でも仕込まれたのかもしれない。
だとしたら……、目の前の自分たちはただの幻、なのか。
答えを得られぬまま立ちつくすバーダックに近づいてきた二つの影は、両側から腕を絡みつけ、夢か現かも分からぬ存在を刻み込むように生温かい舌を両耳へ挿し入れてきた。
朝まで楽しめば全て元通りだ。
誘惑の言葉が濡れた感触と共にバーダックの脳にジワリと染み込む。
……変わらぬ世界を取り戻しても、狂気の夜の記憶からはきっと逃げられない。
end
多分お酒に幻覚剤でも仕込まれたのかも^^もしくは、即席クローン製造薬とか(笑)。仕込んだ相手が誰だ、とか聞かないで下さい。……歌さんの素敵に無敵なバダバダイラストを元に、初書きバダバダに挑戦!のはずが、バダバダ×バダになった……カオス過ぎてスミマセン;;
そのくらい私にはこの歌さんのバダバダの強気攻めにも受けにも見える表情がゾクゾク来てしまったのです////歌さん、こんな出来だけど、素敵絵元に書かせてもらえて嬉しかったです☆
20100911
vegetable・bacon
【主催者コメント】
私の拙いバダバダ絵にbaconさんの素晴らしくカッコイイ文をつけて頂きまして大感激です!!幻覚剤仕込まれたとか、即席クローン製造薬とか仕込んむってくあぁ〜!!スコブル萌えツボっすよぉ〜(⊃∇≦〃)!!読む度にズクズクと体が疼きました!!
仕込んだ相手が誰だって?それはもう皆さんの脳内でモフモフするのがいいと想います!!!(爆)バダづくめで最強バダバダ×バダ文に乾杯です!!!
お忙しい時間を裂いての素敵文をお書き頂きまして幸せであります(人´∀`)♪本当にありがとうございました!!
2010/09/11 如月歌
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