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「今日は雨か」
「いろんな匂いが混じって、とけてるみたいです」
「例えば?」
「アルちゃんの甘い匂いや、カミュちゃんのお日様の匂い」

しとしと、小さな雨音が窓の外を叩く。

「それから、デリ様の、優しい匂い」










†伝わる方法†










優しい、など言われた覚えがなく、俺は少し思考回路が停止してしまった。

俺、カルラゥアツゥレイの皇、デリホウライがトゥスクルに来るようになって、数ヵ月が過ぎた。
とは言っても、回数自体は少ないのだが。

そして、来る度にすることができた。

オボロの妹、ユズハに会う事だ。

最初はオボロの妹、ということで興味本位だったのだが、目が見えないことや、身体が弱いこと、それから、綺麗すぎる心が気になって、何故か毎回ユズハの部屋に足を運んでしまうのだ。

話すことは他愛もないこと。
昨日の夕飯や、オボロの昔話、俺の昔話。

「デリ様?」
「あ…あ?なんだ?」
「いえ…黙ってしまわれたので…ユズハが何か、気に障る事でも言ってしまったのでしょうか」

俺が考えに耽っていたせいで、ユズハにいらぬ心配をかけてしまったようだ。
俺はできるだけ怒っていないように声を出した。

「いいや、そんなことはない。優しいなどと言われた事がなかったのでな、驚いてしまって」
「まあ…」

俺の言葉に、逆にユズハが驚いたように口元に手をやった。

「デリ様の空気は張りつめているからでしょうか?」
「張りつめているつもりはないが?」
「でも、ユズハは胸がドキドキして、緊張します。
デリ様が今日いらっしゃると聞いて、昨日の夜から眠れませんでした」

くは、と俺は笑った。
なんだそれは。

「俺もユズハに会うと思うと、眠れなかったぞ」
「まぁ…ユズハは怖いのですか?」
「さぁなぁ」
「でも…お揃いです、ね」

ふふ、とユズハが笑う。俺も笑った。
何がおかしいのか、二人でくすくすと笑った。

「あの…デリ様?」
「ん…?なんだ?」

笑いが収まった頃、ユズハが言い難そうに口を開いた。

「あの…お顔を触っても、いいですか?」
「なぜ?」
「えと…今、デリ様がどんなお顔をしているか、知りたいです…」

ユズハの謙虚な物言いに、俺は苦笑しながらそれを許した。

ユズハの手が、迷うように宙を舞うのを見て、俺は顔を近付けた。

ユズハの手が俺の顔に触れる。

左頬、左目、額、眉間、右目、右頬、鼻へと指が動く。

「…?」
「どうした?ユズハ」

ユズハが不思議そうに首を傾げるのを、俺は指摘した。
何かおかしな所でもあっただろうか。

「お顔が、熱いような…。デリ様、もしかしてお風邪でも…」
「っ!!」

ユズハが言い終わるか終わらないかの所で、俺はばっと身を後ろにひいた。

まさかまさかまさか。

「デリ様…?」
「あっいやっなんでも…っ!!」

ユズハが不安そうに首を傾げる。
だけど俺も今は自分を立て直すので精一杯で。

だってまさか、言い当てられるとは思わないじゃないか

ユズハと会う時はいつも頬が熱くなるだなんて。

赤い顔を見られないからと油断していた。

俺は口元に手をやった。

あぁそうだよ、俺はユズハが好きだ!


「デリ様…?」

外では雨が小降りになったようで、窓から光がさす。


その光がユズハをキラキラと輝かせる。

盲目のお姫様。

今度は俺に盲目になって。


俺は未だ困ったように宙を舞う手をギュッと握りしめた。

その時ユズハの顔が赤くなったのは、気のせいなんかじゃない。











―――――――――
結局無自覚両想いなんだよ、って話です。
ユズハにデリホウライをデリ様って呼ばす事が出来て嬉しかったです。
ドラマCDの後くらいのお話でどうぞお考えください;
二人の出会いはカルラゥアツゥレイが出来る前の段階ですが、デリホウライはユズハのことは覚えていません。
ユズハはなんとなくわかってます。
My設定すいません;;
ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました
20071124


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