みっともないぐらい、君が好きなんです。 どうしようもないぐらい、君が愛おしいんです。 だから、こんなことを言ってみました。 「くれよ」 彼女は自分の手元を見つめ、ケーキののった皿を隠すように俺から遠ざけた。 「嫌よ」 「いや、そうじゃなく」 いや、たしかにケーキも欲しいけど。 そうじゃないんだ。 「欲しいんだ」 「何が?」 「ナミ」 「…は?」 俺の言葉に、ただでさえ大きなナミの瞳がさらに大きくなった。 その黒い瞳をぱちくりさせている。 まあ、無理もないのかもしれない。 今は波も穏やかでゆっくりと進む船の上で、いつものおやつの時間。 相変わらずサンジのナミとロビンへの贔屓はひどくて、2人にだけはケーキを出していた。 ちなみに俺たちは「お前らは質より量だろ」と言われ、ポップコーンを山ほど食った。 …そんなこと、どうでもいいんだ。 とにかく、今は特別なことが起きたわけでも、特別な時間でもなんでもない。 いつもの、当たり前のこのときに、俺は突然に言った。 「どういう意味?」 「そのまんまの意味だ」 そう、ただ欲しいんだ。 ナミが。 ナミの全部が。 「お前の喜びも悲しみも、笑顔も涙も、俺にくれよ。お前の時間も、人生も。全部全部、俺にくれ」 この言葉に、嘘偽りは1つもなくて。 ただ真っ直ぐな、俺の気持ちだった。 みっともないぐらい、どうしようもないぐらい、彼女のことを想う俺の気持ち。 「…ルフィ」 「ん?」 ちょいちょいと手招きをされて、近づいた。 するとナミはケーキをのせたフォークを俺に向け、笑う。 「あーん」 「は?」 「ほら、あーん」 「…あーん」 俺の言葉以上に突然なナミの行動に、今度は俺が目をぱちくりさせた。 言われるがままに食べたケーキは、痩せてるくせに太ることを気にする彼女のためだけに作られたケーキだからか、俺にはちょっぴり甘さが足りなかった。 「おいしい?」 「うん、まあ」 「じゃあ、はい」 「…ナミ?」 目の前に差し出されたのは、今までナミの手にあった、ケーキののった皿。 もちろんフォークも一緒にのせられている。 「あげる」 「でも、あのな…」 「いいから」 否応なしに受け取らされたケーキに目を落として、小さくため息をつく。 伝わらなかった? それとも、拒絶の意か。 考えてもみてもわからない。 「あげるよ」 「ナミ」 「全部あげる」 「そうじゃなくて」 「そうじゃないよ」 俺の言葉に被せるように発せられた言葉。 ゆるゆると、ケーキからナミへと視線を戻す。 ナミは、優しく笑っていた。 「そうじゃないよ、ルフィ」 「…うん」 「全部あげる。あたしの全部を、あんたにあげる」 両手で握りしめた皿が、手から滑り落ちそうになる。 皿とケーキは無事だったものの、フォークだけは間に合わなくて、カチャンと音をたてて床に跳ねた。 そして、俺はやっぱり彼女のことが大好きなのだと改めて実感した。 「全部あげる。でもね、その代わりにね」 そう言って、ほんの少し恥ずかしそうに、きれいに笑った。 「ルフィの全部を、ちょうだい」 みっともないぐらい、君が好きなんです。 どうしようもないぐらい、君が愛おしいんです。 だから、答えは決まっていました。 「いいよ。俺の全部をお前にやるよ」 イコールの願い 望んだのは、お互い様
[ルナミ企画(蒼海)提出] [グループ][ナビ] [HPリング] [管理] |