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他の誰も知らない



他の誰にも知られたくない





だから…二人だけの、秘密















 make a seacret















「ほらヨ」

「…それが先生に対する態度ですか?神楽さん」



職員室だというのに敬うのうの字もないような態度の神楽に、銀八は頭をボリボリとかいた。

そんな銀八の行動には見向きもせずに、神楽は手に持ったプリントを強く差し出す。



「生徒の前で堂々と煙草吸ってるような奴にはらう敬意はないネ。てか早くプリント受け取るヨロシ」

「へーへーすいませんでしたねー。…プリント全員分ちゃんとあんのか?」



銀八はまったく誠意のこもっていない謝罪をしつつ、差し出されたプリントを受け取り、パラパラとめくる。

途中で自分のデスクの上に置いてあったお茶を神楽が飲んだことにつっこむが、少女はそれを無視して話を続ける。



「ちゃんと全員分あるに決まってるネ!だいたいプリントぐらい自分で集めろヨ天パ教師!!」

「アホか。こりゃバツだからいーの。てか天パ関係なくね?」










『せんせー。留学生の神楽さんが早弁したうえに爆睡してまーす』

『よし、叩き起こせ。多少の暴力なら俺が許す』

『後が恐いので嫌でーす』

『そうかわかった。じゃあ目ェ覚ましたら、今やってるプリント集めて俺んとこ持って来るように言っとけ』

『でも神楽さんのプリント、食べカスと涎まみれですよー』

『自己責任だ。自業自得だ』










「なにがバツアルか!これはイジメアル。訴えてやる!!」

「それどこの番組?てか弁護士雇ってみろ。100人雇ってもお前の負けは確定だ」

「訴えてやる!慰謝料よこすネ」

「お前それが目的だろ。オイ、目的それだろ、オイ」



あいた右手を差し出して慰謝料慰謝料と叫ぶ神楽と、黙れ黙れとあしらう銀八。

周りの先生や生徒からの冷たい視線には全く気付かず、二人は騒ぎ続ける。



「慰謝料払えヨ!」

「黙れ」

「慰謝料くれヨー!」

「黙れ」

「慰謝料よこせ」

「黙……じゃなくて、何で標準語!?マジなのそれ!??」


ニヤリときたなく笑む神楽を見て、本気だ…と悟った銀八は、どうしようかなーとかなんとか呟きながら、デスクの引きだしや白衣のポケットをゴソゴソ探る。



「お!」

「ん?」



ポケットの中から探り当てたモノを神楽の右手に乗せる。



「……酢昆布?」

「おー。お前これ好きだったろ?喜べ」

「………一応受け取っといちゃるヨ」

「…足んない?それだけじゃ」

「え?………あ」



意味深なことを言った銀八の手から、プリントの束が床にバサバサと落ちた。

もーなにやってるネ!と言いつつしゃがみこみプリントを拾う神楽に合わせ、銀八もイスから降りてプリントを拾う。



「……………」

「……………」



お互いに無言のまま拾い終わったプリントを軽くまとめ、銀八に手渡そうと神楽は顔をあげ、





「はい、先生…………んん…!?」





そのまま硬直した。





触れた。

ほんの一瞬。

本当に一瞬だけ。

何かが、触れた。



唇に。





「これで足りた?」

「…は?」

「慰謝料」



ニヤニヤとやらしく笑う銀八の顔に、神楽は右ストレートをくらわせた。















「さようなら。セクハラ教師」

「まてまてまて。その名前は広めるなよ。馴染みそうで嫌だ」

「安心するヨロシ。もう十分馴染んでるネ」

「マジでか。そうかー。でも他の奴等はまだ知らねぇよな?」



そう言うと、銀八は人差し指を自分の口の前へやり、



「だから、今のこと、秘密な?」



シーッと合図して、笑った。





「……っ。…どっち?」

「あ?」

「酢昆布のこと?それとも…「両方」



強い口調で言われたその台詞を聞いた神楽は、照れたように…でも嬉しそうにコクンと頷き、職員室を小走りで後にした。



そんな少女の背中が完全にドアの向こうに消えるまで見つめた後、銀八は新しい煙草に火をつけた。















END







●あとがき●

初めてのまとも(?)な3Z銀神。
職員室でキスするなんてけしからん!
銀八はいつクビになってもおかしくない。

タイトルはBoA。


[相互感謝/木星オルガン様]
『3Z設定の甘めな銀神』

「一応甘く…なってます?
自分なりに甘くしてみたつもりです!
…宜しければ受け取って下さいませ(礼)」



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