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こんな日は一人じゃ少し寂しい



だから一緒に手をつなごう





この、真っ白な世界で















 雪のツバサ















「銀ちゃん銀ちゃん!今日のお天気予報見たアルか?」

「あ?予報は見てねぇな。結野アナを見ていたんだ、俺は」

「今日の夕方ぐらいから雪が降るって言ってたヨ!!」

「雪だぁ?まだ十二月の初めだぞ。雪が降るわけあるか」

「でも空、どんよりしてるネ」



神楽にそう言われ、窓のほうへ目をやった。

なるほど、確かにまだおやつの三時だというのに空は暗い。

だからと言って十二月の初めなんて早い時期に、かぶき町に雪が降ったことなど今まで一度もない。

銀時にはとうてい信じることなどできなかった。



「だから銀ちゃん。私、定春と散歩しながら外で雪降るの待つアルから」



言うが早いが定春の首輪にリードをつなげ、万事屋を出て行こうとする神楽の腕を銀時はあわてて掴んで引き止めた。



「おいおいおい!んな格好で外なんか出たら風邪ひくだろーが!」

「平気アル。子供は風邪の子ネ!」

「関係あるか!バカでも風邪はひくんだよ」

「んだとコルァ。私がバカだってか。バカだってかコルァ」

「黙れバカ。ちょっと待ってろアホ娘」



そう言って一度部屋の中へと戻って行った銀時。

しかし、しばらくたって戻ってきた彼の首にはマフラーが巻かれ、分厚い上着を羽織っていた。



「ほれ、せめてマフラーぐらいしやがれ」



ブツクサ言いながら銀時は神楽の首にマフラーを巻いてやる。

そんな銀時の格好を神楽を驚いたように凝視した。



「……んだよ」

「銀ちゃん…その格好」

「めんどくせーけど、俺も一緒に行ってやるよ。寒いけど」



…自分が一緒に行かなければ、神楽は降ることのない雪を永遠に待ち続けそうだった。

いや、冗談ではなく。



「行くぞ」



神楽は嬉しそうに頷くと、左手に定春のリードを、右手に銀時の手をにぎった。
















「………寒い」



神楽につられるまま外へ出たものの、予想以上の寒さに銀時は体をガタガタと震わせ凍えていた。



「なにこれ。寒くね?寒すぎくね?」

「銀ちゃん情けないネ。私なんて全然平気アルヨ」



歩みの遅い銀時の手などとっくに離し、前で定春のリードを持つ神楽が振り向きながらそう言った。



「お前の子供体温と一緒にすんな。それに知ってっか?男のほうが脂肪が少ないから女より寒がりなんだぞ」

「それは私にデブって言ってるアルかァァ!だったらなんでついてきたネ!!」



……シンと沈黙が訪れる。

自分と同じようなノリで返してくると思った銀時は黙って何も言わない。

神楽は少し不安になった。



「……銀ちゃん…?」

「…あーそれにしても寒いなぁ。まさか本当に雪なんて降んねぇだろうな」



わざとらしく突然話題を変える銀時。

神楽は不思議に思いつつも銀時に話を合わせた。



「何言ってるネ銀ちゃん。雪降るって結野アナが言ってたたヨ」

「だから降るわけねーって。結野アナはウソついたんだよ。つきたかったんだよ、たまには」

「ウソだったアルか。ウソップだったアルか」

「ウソウソ。ウソに決まってんだろ。ウソップじゃねぇけどな」



がっかりと肩を落とす神楽の頭をワシャワシャと撫でてやった。

その時、桃色の頭についた白いものを見つけた。



「おいおい。お前頭にフケついてんぞ」

「マジでか。昨日ちゃんと洗ったつもりだったのに」

「ったく、ちゃんと洗えよな……ってアレ?」



はらってやろうとその白いものに指先で触れると、スーっとすぐに消えてしまった。



「アレ?」



目をこすってもう一度見て見ると、神楽の頭には白いものがのっていて、それに触れるとやっぱりさきほどと同じようにすぐに消えてしまった。



「アレ…?アレェェェ!?」



再び目をこすり、どんよりとした暗い空を見上げた。



そして、見えた……白い、カケラ。



「雪…!雪アル銀ちゃん!ホントに降ってきたネ!!」

「ウソォォォ!?本当に降ってきやがったよ。結野アナウソついてねーじゃん!俺がウソップになっちゃったじゃん!!」



キャッキャッと駆け回る神楽と定春を惚けたように見つめた後、ゆっくりと目線を上へとやった。





……やっぱり、一緒にきて良かった。

一人で雪を見るのは…虚しいだけだ。





空から落ちてくる真っ白な雪が、なぜか悲しかった。





「銀ちゃん銀ちゃん!すごいヨ!真っ白!!」

「あぁ…そーだな。でも寒いからもう帰っぞ」

「えー…。もう少し遊びたいアル」

「大丈夫だよ。この寒さなら明日にゃつもるから。また明日遊べ」



そう言って差し出した銀時の手を、神楽は仕方ないアルなぁ…と言いつつも、ギュッと握った。


握った手は、こんなにも寒いのに、安心するほど温かかった。







「銀ちゃん。一緒に来てくれて、ありがと」

「あん?」

「雪は…一人で見るとちょっと寂しいけど、二人なら楽しいアル」

「……そーだな」





つないだ小さいな手が、やけに愛しかった。















END








●あとがき●

銀さんはあの真っ白な雪が苦手。
昔たくさんの仲間を失ったから。
そんな勝手な自己設定な文でした。

タイトルはredballoon。


[拾萬打企画/まァ子様]
『冬のほのぼの銀神』

「冬ということでベタすぎる雪の話。
ほのぼの…してるのかな?
やっぱりしてない。…ごめんね」



あきゅろす。
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