「はぁ、あと少し…ってあれ、こんなに時間経っちゃってた…」
長時間同じ姿勢で固まってしまった腰を軽く叩きながら時計を見れば始めた当初からかなりの時間が過ぎていて。
すっかりジグソーパズルに夢中でほったらかしにしてしまった愛しい人を思い出して、慌てて視線をさ迷わせる。
すると、ベッドで横になっている姿を視界に留めて、僕はいそいそと膝歩きで近寄った。
「ごめんね、カヲル君僕夢中でして、た……ん?カヲル…君?」
謝罪を告げる最中反応のない相手を覗きこめば、その双眸は閉じられ小さな寝息も聞こえる。
寝ちゃったんだ。
せっかく部屋に遊びに来てもらったのに、やってもいいよっていう言葉に甘えてしまった自分を悔いながらも、静かに眠るその寝顔に思わず釘付けになる。
長い睫毛。
透き通る肌。
赤い唇。
何度も見ているはずなのに、何度見ても綺麗だと、見惚れてしまう。
そのまま吸い込まれるように唇を重ねそうになって、はたと動きを止めた。
本当に寝てる、かな。狸寝入り、とか…ないよね。
そんなの漫画の読みすぎかな。
でも…いっそ起きててくれてもいいかな、なんて。
そんな浅ましいことを考えながらそっと唇を押し当てた。
柔らかい、大好きなカヲル君の唇。
ドキドキしながらゆっくり唇を離してみる、けどやっぱり反応はない。
そりゃそうだよね。
ちょっと残念な気持ちになっている自分に苦笑しつつ、起こすのも悪い気がして背中を向けかけた時。
「終わったのかい?」
降りかかった声に鼓動が跳ねた。閉じられていたはずの双眸は開いて赤い瞳が真っ直ぐに僕を見つめていて。僕の鼓動は早さを増していく。
いつ、起きたんだろ。
キスしたの…知ってるのかな。
「シンジ君が終わって僕を呼びにきたのは知ってたんだけど…」
…っやっぱり、キス…したの分かってる
それが分かると途端に顔が熱くなる。期待してたけど、実際そうなると恥ずかしさが先に立つ自分が情けない。
でもそこでほったらかしにしていたことを思い出した。
こんなこと考えてる場合じゃない。
カヲル君に謝らないと。
「ごめんねっ、僕すっかりジグソーパズルに夢中で…カヲル君のこと、ほったらかしで…」
意を決して膝の上に握り拳を作り謝罪を言葉にすると、すぐに宥めるように優しく頭を撫でてくれるカヲル君の手。
「気にすることはないよ、一生懸命やる君の姿はとても可愛かったから」
優しい言葉に負けないくらいの優しい笑顔に逆に気を使わせてしまっているんじゃないかと申し訳ない気持ちになっていると、それを察したらしいカヲル君が覗き込んできて。
「そうだね…じゃあもう一度、キスしてくれないかい?それが君からの謝罪にするから」
「そんな、ことでいいの?」
「うん」
笑って頷いたカヲル君はそっと目を閉じる。
キス出来るのはむしろ嬉しくて。正直謝罪になるかは分からなかったけど、しない理由もないわけで。
ドキドキしながら再び僕は唇を重ねた。
すぐ離すとどこか困ったような表情を浮かべるカヲル君。
僕のキス、どこかまずかったかな。
「やっぱり、一回じゃ足りないかな」
予想に反した言葉に疑問を返すより先に重ねられた唇に呆気なく僕の思考までも奪われる。
ジグソーパズルも楽しいけど、やっぱり僕が一番夢中なのはカヲル君かもしれない。
他に何もいらない。考えることすら億劫だ。
そう、改めて自覚しながら僕はカヲル君の背中に腕を回した。
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ジグソーパズルが完成間近の妄想でした(笑)
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