月には水がない








出逢うは運命(さだめ)。























二人の縁が交わる時、自然は芽吹くだろう。
























オアシスの上で舞い踊り、自然を湛えん。
























彼の姫の、澄んだ歌声を響かせて―…
















「それが、お前の声か。綺麗だな。なんというか…心を擽るような暖かいような……すまん、良い言葉が浮かばん。」


「いいえ?そう、言ってもらえただけでも、嬉しいですよ。」


歌姫は、頬をほんのり色付かせて優しげな微笑みを浮かべた。


「そうだ。名はなんと?」


「…弁慶。」


そっと控え目に紡がれた言の葉が、幾分か儚げに九郎の耳へ届く。


名が、先ほどの歌声のように直接、脳内に響いてきて。


「弁慶か。良い名だな。」


どちらともなく視線が交わり、クスッと零れる吐息。


さわさわと、木々の葉々がそよ風で揺れる。


大空(そら)で鳥たちが優雅に翼を広げ、自由に飛び回り。


ぴーひょろと鳴く。


「そろそろ行くか、弁慶。」


与えられた名を呼ぶ声が、暖かい。


ひらりと裾を翻し、荷物を纏める彼の側に寄ってひんやりとする手を九郎の頬に添えた。


伝えることは、己の意思一つ。


「君の、望むままに…」











新たな道を、二人で切り開かん。









-終-



あきゅろす。
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