紅の人形
予告編
迷えるはドール。
交錯するは闇と心。
複雑な糸は深く解けぬ程に絡みて、新たな道を作りだす…。
「ヒノエ…」
抑揚の無い声が、隣で寄り添う主人の名前を呼ぶ。
「なに?」
「そばに居ても、いいんですか?」
拾われる以前の記憶がない、誰とも分からないドールを大事に囲うヒノエが、不思議でならなかった。
「いいよ。何なら、弁慶だけを伴侶として迎るぜ?」
綺麗な指先が、弁慶の頤を捉え口唇が触れ合い。
甘い口説き文句にドールの心を激しく揺れ動かすは、耳元で紡がれる甘き言の葉。
人らしく生きたいと、この人の側にいたいと願うのは、罪なのだろうかと己に問い掛ける。
「迷うなら迷っていいさ。けどね、一度気に入って手に入れたモノは手放さない主義だからね。」
…─そう、ならば緋色と漆黒の闇を抱う、君のドールとなりましょう─…
幾重にも張り巡らされし闇糸(やみいと)を晴らすは、淡き想いのみ……。
終
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