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忘れ物をしちまう日は、どうしてこんなにも一日にいくつも大事な物を忘れてきてしまうのだろうか。
人間誰しも、一度は経験したことがあると思う。二度あることは三度ある、とはまた違うのかもしれないが、母親がわざわざ作ってくれた弁当と、5時間目の授業で必要な体操着、そのふたつをまとめて玄関に忘れてきた。
弁当の方は学食で適当に済ませたからいいものの、問題は体操着だ。
体操着を忘れたから見学します!だなんて間抜けな事は願い下げだし、制服のままなんて論外だ。となると、あとは今日、体育の授業がある他のクラスの奴から借りるしか手はない訳で…俺は重い腰を上げて立ち上がる。

向かう先はもちろん9組。今日の午前中、古泉が授業で校庭を走って居たからな。
俺の席からは校庭が丸見えである。昼前の退屈な授業中、暖かな春の日差しを浴び、うとうととしていると手を振ってくる人物が見えた。緩やかな風に吹かれ、ミルクティー色の髪がなびいていた。大げさに手を振る様子を見て、人違いなどする訳がない。流石に表情までは見えないものの、アイツの胡散臭い程に爽やかな笑顔が易々と想像出来て、古泉であると判断したのだった。

「悪い、古泉を呼んでもらえるか?」

古泉の席は丁度教室の真ん中あたりにあって、図々しく他のクラスにずかずかと入るのも気が引けた為、適当な男子生徒に呼んでもらうように頼んだ。
クラスメイトに呼ばれ、こっちを向くと、古泉はすぐにお決まりの微笑みを浮かべてこっちに向かって歩いてくる。

「おや、珍しいですねぇ…キョン君が出向いて下さるなんて」
「用がなきゃ、わざわざこねぇよ。体操着忘れちまって…悪いが貸してくれ」
「体操着ですか?構いませんが、ご存知の通り午前中に使ってしまったので…もしかしたら汗臭いかもしれないです…大丈夫ですか?」
「構わないさ、貸してもらえるだけ有難い」

そんなこんなで古泉から体操着を借り、そそくさと教室に帰って着替えた。
…が、本当に…ムカつく程にサイズが合わん。
こうなる事は想定内であったが、下ジャージに至っては裾の余り具合が想像以上、みっともない事この上なかった為、体操着の上から上ジャージだけを身に付け軽く腕まくりをした。
汗臭いかもしれない、そんなことを言っていたが…もちろん全く気にならない。
そりゃ、洗いたての洗剤の香りとか、フローラルな柔軟剤の香りとか、そんな類の香りはしないけど。
お察しの通り、汗臭くてどうしようもないなんて事、ありえる筈がなかった。

むしろ、この匂い…嫌いじゃない。

他の奴らは、とっくに着替え終わって移動教室を終えている。今、教室にいるのはこの俺、ただ一人。がらんとしていて静かであるが、微かに隣の教室でわいわいと騒ぐ生徒の声が聞こえる。
体操着を借りてまで参加しようとした体育の授業が始まるまで、あと5分…急がなければ間に合わない。今日の授業は校庭でサッカーだ。
なのに、俺は…校庭に出ようとはせず、そのまま普段座っている席に座って、居眠りをするように机に突っ伏した。

体操着に染み付いている古泉の匂い。
制汗剤の爽やかな香りに混じって、いつも古泉に抱かれている時に感じるそれは、不覚にも俺の心臓をひどく高鳴らせる。着替えたらさっさと授業に向かうつもりだったのに、それが出来なくなっていた。

何だか、凄く興奮する。
迂闊だった。
男子高校生の性欲なんて、笑っちまう程に旺盛で、大袈裟に言えば、それこそ好きな奴の箸が転がっても興奮する。そんな風に出来ているのは俺も例外じゃなくて、好きな奴の匂いをこんなにも全身で感じてしまっては、どきどきするな!という方が無理であろう。
意識をし始めたらもう、おしまいだ。
息をする度に、鼻腔をくすぐるその匂いに、俺の理性はもうとっくに限界だった。
誰もいない教室でひとり、悶々としていると、授業開始のチャイムが鳴り響いた。

キン、コン、カン、コン…

チャイムが鳴り終わるのを聞いてから、俺は立ち上がり走り出した。
何処へ向かっているのか?そんなのは決まってる。
授業が始まって誰も居なくなった廊下を全速力で走り抜け、部室のすぐ側にあるトイレへ向かった。
仕方がない、生理現象なんだ…そんな事を自分に言い聞かせるように心の中で何度も呟きながら走る。
誰に声を掛けられる事無く、そこへ駆け込むと個室のドアを締めた。

はぁ、はぁ…

はぁ、はぁ…

便器に腰掛けてうずくまり、呼吸を整えるべく何度も息を吸っては吐いて、荒い呼吸を繰り返す。
トイレの中はなんだかひんやりしているのが常だが、狭い個室は俺の体温の上昇に伴って、じめじめと湿度が上がっているような、そんな気がした。
吸っては吐いて、繰り返しながら感じるのは…やっぱり古泉の匂いで、嫌になる。
もう熱は収まらない…

授業をサボって学校のトイレで自慰行為に勤しむなんて、我ながらとんだ変態ヤローだ…古泉のこと、変態だなんて罵ることが、いよいよ心苦しくなってきたぞ。
まぁ、出さなきゃ収まるものも収まらない…諦めて、性急に半ズボンと下着に手をかけ一気に下ろした。
完全に、とまではいかないものの、既に興奮状態にある俺の愚かな息子は触られる事を待ち望んでいるかのようである。

「ぅっ…ん、ん…」

こんな恥ずかしい行為早く終わらせてしまえ。そう思い早々とソレを握り、ゆっくりと扱き始める。
徐々に先走りが滲んできて自分の手のひらを汚していく。

気持ちいい、止まらない…

何度も上下に扱きながら、先端部分をぐりぐりと擦る。この感覚が好きで何度も繰り返すと早くも限界に達してしまいたくなる。

「あぁ、っん…んっ…」

思わず抑えきれない声が溢れてしまって、こんな時間に部室棟に来る奴なんか居ないとは思うが、万が一聞かれたら厄介だ。出来る限り抑えなくては…

もし聞かれたら…そんな事を考えているとドキドキと心拍数が上昇…
声を抑えるつもりで、肘の辺りが口元にくるよう、肩に空いている腕をかける。
俺をこんな風にした元凶である匂いを再び強く感じながら、目を瞑り集中して同じ手の動きをひたすら繰り返す。

「…古泉っ、あぁ、い…イクっ…」

気持ちがいい感覚を少しでも強く長く感じたくて、先端部分を擦ったり止めたりを繰り返していると、早くも我慢が出来なくなり、一際強く擦った。既にぐちゃぐちゃに汚れてしまっている手のひらが溢れ出た精液で汚れた。

「はぁ、はぁ…っ馬鹿…だな、俺…」

肩を動かして呼吸を繰り返すとやっぱり感じるアイツの匂い。
呼吸が落ち着いてくるのと一緒に、思考の方も冷静に落ち着いてきちまって、虚しくなった。
アイツの匂いはするのにこの狭くて冷たい個室には俺ひとり…
畜生…まだ体の奥がむずむず痒い。
今日の放課後は早く帰ってアイツの部屋に邪魔するとしよう。よし、メールだ。
トイレットペーパーに残骸を吸わせながら、そんな事を考えた。





**
なんかエロって自慰しか書いてないなww
いいよね。体操着忘れた、貸せよってロマンですよね。
高校時代を思い出します。




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