人たらし
最近土方とのセックスに一段落した。
大概自分はこのセックスに一段落する頃に女ないし男と別れる事が多い。
理由はそれ以上時間を相手に割いた所で自分の中で意味が湧いてこないからだ。
しかし珍しいかな。
土方と会話をしたい、と思うようになった。
会話の始まりは何でも良い。
とりあえず自分の事を話し、相手の反応を見て苦笑と愛想笑いと、そしておかしくて笑っているのを判断して話を広げたり切ったりしていけば良いだけだ。
そこから相手が自分から話した単語を拾い、興味を持ったりして質問をしてくる。
それで会話が出来上がる。
中には会話を持たせるがためにする質問も有るだろうが面白く話せば、会話持たせる質問も興味へと変わるものである。
それから相手に質問をして、相手の事を知れば良い。
自分が話ばかりをしていても、相手が喋り易くなる空気を作る効果にも成り得る。
それで何となく土方に質問をして会話をしていく内に、質問するとちゃんと喋る奴だと分かってきた。
おかげでますます自分が土方に対して興味が湧いてしまい、口が滑ってしまった。
「何でオレなんかと一緒に居んの」
などと、言った後に後悔するような質問をしてしまった。
こんな質問は自分の事好き？などと無駄に確認するものに似ている。
馬鹿な女からするものだ。
または若い奴がする。
そして、考え過ぎかも知れないが相手を侮辱しているともとれる。
この質問で土方は一旦眉間に皺を寄せてタバコの煙を吐き、仕方無さそうにこう答えた。
「…好きだとかの感情云々よりも、単にお前に時間を優先しているだけだ」
オレは驚いた。
質問した瞬間に、コイツがお前の事が好きだからだ、などとは言わないだろうし、または質問をはぐらかすだろうと予想したからだ。
久しぶりに自分の価値観が凌駕された。
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