だがそろそろ。 思い出すのを止めなければならない。 考えると、きつい。 だから捨てるべきだ、この吸殻は。 机から。 立って。 歩いて。 便所行って。 便器に吸殻入れて。 流す。 単に5つの行動だ。 簡単なのだ。 そうこう考えていたら。 「銀さん、僕帰りますからね。また明日」 新八が出て行った。 「んー…じゃー、明日なー」 見送りの言葉を掛ける。 また思い出す。 アイツは。 オレが寝ている内に帰るので。 見送りの声を掛けた事は無い。 初めてかけたのは。 別れた日だ。 最初で最後だった。 「じゃあな」 「じゃあな」 お互い出た言葉は一緒だった。 新八にかけた、明日、は無い。 捨てたら最後だ。 吸殻に明日は無くなる。 だから。 1センチも吸ってないアイツの最後の煙草を吸おう。 「…」 手に取る。 口にくわえようか。 迷う。 だが。 寸でのところで戻す。 思わず立ち上がった。 灰皿を持つ。 そして便所に急ぐ。 扉を開ける。 便器に貯まった水に吸殻を放った、その瞬間。 「あ」 小便したくなった。 オレはきっと永遠にアイツの犬だ。 [グループ][ナビ] |