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一ノ姫って、何だか弱々しいよな。



そう一番初めに言い出したのは羽張彦だ。
羽張彦と風早、柊、忍人は竹簡に集中していなければならなかった時である。

またか、と言わんばかりに、溜息をついたのは珍しく忍人ではなく、柊と風早であった。
忍人は羽張彦の言葉を無視するように、黙々と筆を進めている。




「当たり前ですよ、羽張彦。女性なんですから」

「風早の意見に賛成ですね。それより早くその手を動かしてくれませんか?」

「な、なんだよー、二人して。俺の話も少しくらい聞け、って!なあ、忍人」

「だったらそのお前の前だけに積まれた竹簡をどうにかする事だな」




忍人の方に助け舟を出すものの、当の忍人には溜息をつかれた。
三対一、勿論口で勝てる筈がない。
羽張彦はいじけて唇を尖らせた。


渋々目の前に積まれた竹簡に手を伸ばした羽張彦だが、話す口を止める事は無かった。
こうなったら意地だ、と言わんばかりである。

しかし手を進めるなら話に付き合うのが三人だった。
羽張彦は本当は優秀な人間なのだから、手を進めてさえくれれば良いのだ。




「だからさー、この間思った訳よ」

「何を」

「風邪ってだけでぶっ倒れたろ、この間」

「…そうですね。でも人間ですから、当たり前なんじゃないですか?」

「その時さ、見ちまったんだけど、こう…ふわーっと」




どう表現したら良いのか解らないとでも言いたげに、羽張彦は手を動かした。
それを見る三人ではなかったが、何と無く理解している。
流石に長い時間一緒に居る訳ではない。

ああ、と頷いた三人に深く羽張彦は頷くと、ぐっと拳を作る。
そして強く握りながら、声高く主張した。




「だから一ノ姫は絶対俺が守ってあげなきゃなんねぇなって思う訳だ!弱いし!」




先程頷いた三人は頷くべきではなかった、と今更ながらに後悔をした。
要するに一ノ姫の事を話したかったようである。
こうなった羽張彦の話は長いのだ。

しかも手が止まっている所か、既に竹簡はおざなりにされている。
ああ、また後で手伝う羽目になるのか、と忍人が呟いたのを風早と柊は諦めたように肩を竦めて返した。


羽張彦の主張は続く。
恐らく何か空気を変える出来事がなければ、彼の主張は延々続くだろう。

その時だった。




「あら、別に守ってもらわないと駄目な程、私は弱くはないわよ?」

「!い、一ノ姫!」




にっこりと笑顔を浮かべた一ノ姫が、羽張彦の後ろに立っていた。
その笑顔が何だか怖い位覇気を持っているのを気のせいであってほしいと、真正面に居る風早は思った。

固まったのは羽張彦だ。
どうやら彼には一ノ姫の声色で、何となく彼女の機嫌がわかるらしい。
ある意味便利だが、ある意味便利じゃない方が良いとも思う。


一ノ姫は羽張彦の肩に手を置いた。
それに羽張彦は大袈裟とも取れる位、肩をビクッと揺らしていた。

そしてそっと羽張彦の耳元に唇を寄せた一ノ姫は、小さく呟いた。




「随分、自分の腕に自信があるようね、羽張彦」

「あ、いや、さっきのはだな…」

「でもね、そうやって自分の腕を過信する人間っていうのは良くないわ。色々と怠るもの」

「で、ですよ、ねー…」

「その自信、へし折ってあげましょうか?」





爽やかな笑顔で羽張彦の肩を叩く一ノ姫。
羽張彦が凍り付いたのは、言うまでもない。
















羽張彦の失言
>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>
「すみません調子にのりました」
「わかれば良いのよ」


同門と一ノ姫。
この面子だとどうしても一ノ姫が最強になってしまう(笑)


あきゅろす。
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