(眠るあなたは、何時だって私を守ってくれていたのにね。) 火が揺らめいて、それでもあなたの顔を見せてくれる。 横たわるあなたは、血の気のない顔をしているだけ。 生きているように見えるのは、きっと気のせい。 私の隣では風早が彼を見下ろしていて、向かいにいる遠夜が、最後についた傷だけを治していた。 それだけしかできない、と遠夜が言っている。 狗奴の人達は涙を堪え、唇を噛み締めていた。 ねえ、あなたの為にこんなに泣く人がいるのよ。 そう言ったって、どうにもならない。 だからその言葉は口の中で淡く溶け、そのまま消えた。 一人になっても、あなたの傍から離れない。 夜は一人だと寂しいから、と言ったらあなたは何て言うんだろう。 そんな事を考えて、傍から離れない。 不意に手に触れて、本当にあなたが冷たくなってしまったのだと実感した。 この冷たさを感じられるのも後少しなんだろうか。 だったらそれでも手を繋いでいたいと思った。 あなたの手は冷たくて。 けれど所々に付いた傷が、あなたの歩いて来た日々を教えている。 血豆が出来ていた痕や、切り傷、擦り傷。 小さくて、それでもこの手で私を守ってくれていたの。 今更になって気付いた。 それを言ったって、あなたはきっとほんのりと笑うだけ。 当たり前の事だと言うだけ。 私には、それがどれだけ嬉しいかを知らないでしょう? 空が白み、朝が来る。 別れは直ぐそこに来ている。 それでもあなたが此処に居るから、私は此処に生きる。 『君の統べる、良き国に俺は生きたいと思う』 そう言ったあなたは、その言葉で私を生かして、眠っている。 あなたを追い掛ける事すら、きっと許して貰えないのね。 一緒に眠る事すら。 ああ、そうだ。 永き刻を経て、また新しい物語が始まるまで。 あなたはこうやって眠るのね。 「忍人さん。そうしたら、またこの手で、私を守ってくれますか?」 Hand that became cold >>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>> そうしたら、今度はあなたの事は私に守らせて下さい。 忍人さん。 きっと同門達の手は傷だらけなんだろうなぁ、という妄想から(妄想からなのか) Hand that became cold(冷たくなった手) [グループ][ナビ] [HPリング] [管理] |