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禍日神に初めての攻撃をくらった。
那岐は全員が天鳥船に逃げ込んだ後、姫の安否を確認した風早を目で追った。
風早は姫が無事だと判ると、次に兵士達の負傷数等を確認しに、忙しいようだった。

しかし何か違和感を感じて、那岐は風早の様子を見ていた。
那岐以外は今の状況を休む間もない。
那岐はといえば、確かに他の面々も気になってはいるが、那岐では出来る事は少ない。
例えば僅かに傷から感じる瘴気を払ったり、薬草を採れるものを持ってきたりだとか。
それ位だった。


とりあえず邪魔にはならないようにしていたのだが、やはり風早の様子がおかしいと感じていた。
普段と変わらないようで、だけど肩を庇うようにしている。
だが恐らく、だ。

きっと姫を心配させない為に、黙っているんじゃないだろうか。
この分だと、暫くは隠すつもりだ。


風早は治癒も出来るが、風早の事だ、放っておいてもその内治る、で自己完結するのだろう。
自分以外では怪我を心配するくせに、自分に関しては特に注意を払わないのが悪いくせだ。




「風早、ちょっと」

「…?どうしました?那岐も何処か怪我したとか」

「違う。良いから、来て」




手招きをして、誘う。
何かあったのか、と、風早は心配そうについて来た。

向かうのは書庫だ。
今なら柊もこれからの軍略やら何やらで忙しく、書庫に居ないと予想していたからだ。
勿論、予想通りにそこには柊は居ない。


とりあえず風早を座らせて、那岐は風早の肩を掴んだ。
風早は痛みからか、眉根を寄せると歯を食いしばった。
やっぱり、と那岐は呟く。

無理矢理に上半身の服を剥き、肩を露にさせた。
肩を覆うような痣。
そこに滲むのは鬱血だろうか、肩から肘に掛けても、こっちから見て痛みを感じる程、痛そうな怪我をしている。




「……何、それ」

「―――那岐は気にしなくて良いんですよ」

「気にするだろ、こんなに酷いんだからさ」

「治癒する時間が無かっただけですから」




そうやって笑う姿が痛々しかった。
けれどその姿は那岐を苛立たせるものだった。

まるで関係ないと拒否されたみたいで、何だか嫌だった。
風早の事だ、心配させないように、と思っているんだろうけれど。
それが無性に嫌で堪らなかった。


しかも気付いていないのだろうか。
その傷付いた肩には僅かだが瘴気が見える。

那岐には見えるのだが、風早は何も言わない。
風早では瘴気を払う事は確か出来なかったようだが。
メンバーの中では遠夜と那岐しか出来ない。




「ちょっと待ちなよ、あんたの肩、瘴気が―――…風早?」

「…は……え?那岐?何か…言いましたか…?」




見るからに顔から血の気が引いていて、今にも倒れてしまいそうな様子だった。
瘴気が纏わり付いていると気付いた途端、風早は身体の不調に気付いたようだった。

ぐらついた風早を引っ張って受け止める。
那岐は全く、と呟くと、腕の中に収まった風早の肩に集中した。

しかし、それを遮ったのは風早の声だった。




「…那岐」

「ちょっと黙っててよ。今治すから」

「那岐の声を聞いたら、何だか安心して…身体の力が抜けてしまって…すいません」

「え、」

「…ちょっと、30分だけ」




手を翳して、呪いを唱えた時、肩に頭を乗せて風早は笑った。
その声と表情に那岐は何も言えなくなってしまった。

溜息をついてから、そういえばさっきから風早が休んでいるのを見ていない事に那岐は気付く。
忙しい時間を怒涛のように過ごしていたのだから。
疲れているのも納得はいく。
恐らく瘴気のせいで体力が極限まで削られているのもあるだろう。


けれど風早に最後のとどめをさしたのは那岐だった。
風早は那岐の声に安心を覚え、身体の力が抜けてしまっていて。
それを自分で言っていた。
痛みで朦朧として、無自覚だろうか。




那岐はうっかり口元が緩んでしまっていた。
勿論、さっきの風早の言葉も聞いている。


(全く、らしくない!)



那岐はそうは思うも、嬉しいのは確かだった。
聞こえてくる寝息が逆に那岐も安心させたのだけれど。
つい、顔を綻ばせてしまった。







「仕方ないやつだよ、全く」
















らしくないけど、でも。
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でも聞こえてくる寝息に、全部どうでも良くなっていた。


那岐×風早。
無意識にバカップルで良いと思います←


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