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司馬昭×賈充
現パロでひたすら致しているエロ本です。
*いわゆる特殊嗜好を含みます
*えげつないです(当社比)
*えげつないくせに少女漫画です。
*昭がろくでもないせいで、SMのつもりで書いた部分が
DVに見えるかもしれませんがSMです。(賈充はよろこんでいます)



プロローグ

 世界にふたりだけ。
 そんな確信が高鳴る胸にしっかりと存在する。理由など野暮だ。子上が愛おしい。それ以外に思考が働かない。
 賈充は、息をついた。少し落ち着こうと思った。体内で燻る熱が若干でも冷めればという期待もある。
 耳たぶが焼け落ちてしまいそうに熱い。賈充はゆっくりと視線を巡らせた。どうしても司馬昭が視界に入るのが嫌になって瞑った。嫌になるほど好きなのだ。
 大きな掌が伸び、先ほどまで出ていた夕日を思い起こさせるような赤みを帯びた賈充の耳たぶを包んだ。賈充は動揺して拳を握った。肩をびくつかせないようにするのに苦心した。
「賈充」
 スマートな挙動で近づいた唇が耳たぶをはんだ。賈充の努力を嘲笑うかのように。立っているのすら辛い。もはや賈充の脳内から、今この状況に至る経緯はすっかり抜け落ちていた。

 経緯とは。
 今、司馬昭と賈充は、遊覧船の上にいる。誘ったのは司馬昭だ。友人関係にある二人だから、大学の夏休みに観光地へ遊びに行くのなんて日常の延長でしかない。賈充はそう理解していたし、それ以外の可能性をまるで疑わなかった。
 デイクルーズの最後に乗り込んだ。司馬昭の提案だ。もう日が短くなっているから、うまいこといけば夜景が楽しめるのではないかと。ナイトクルーズは割高なのだ。
 果たして司馬昭の目論見通り、遊覧が始まり十分で海岸線はじわじわと夜に染まった。橙の空が真紅を経て闇をまとえば、海を隔てた工場も遠くの橋もダイヤモンドみたいに輝く。
 賈充は、手すりに軽く手を置いて静かに風を受けていた。夜景が好きなのはこの刎頸の友の知るところなので――優しい子上はそれを踏まえてこの小旅行を企画してくれたのだろう――上機嫌なのを隠すことなく景色を眺める。
 ふと目線を船内にやれば、賈充は呆れて溜息した。男女が身体を密着させてキスの真最中だった。まったく人目も憚らず嘆かわしい。しかし、と賈充は思考し、裏付けを取るために船内を見回した。
(やはりか)
 熱烈なキスに夢中なのはひと組ではない。いや、ひと組どころではない。周りがほとんどカップルなのだ。賈充はもう一度息をついた。気まずい、と思うが、それでこっちがこそこそするのも阿呆らしい。
 お前もそう思うだろう、子上。そう同意を求めようとして、横を向く。そうして賈充は息を呑んだ。子上が、この上なく熱く真剣な眼差しで俺を見ている。
「子上……雰囲気に酔ったのか」
 笑おうとしたが、無理だった。猛烈な羞恥心が賈充の胸中に生まれ、急速に爆ぜた。せっかく隠しているのに、やめてほしい。勘弁してほしい。
 そう、賈充は司馬昭が好きだ。恋愛対象として想っている。
 それを隠すことに一片の躊躇もなかった。賈充は、司馬昭は普通に恋愛をして結婚して、幸せを掴むものだと思っていた。そうならないならどうなるのか、とすら考えている。だというのに。
(子上、男の俺では駄目なのだ)
「ん、だーめ」
 駄目。そう思ったことを口に出されてどきりとした。賈充は司馬昭の視線から逃れるように身体を捩った。両肘を手すりについて、重ねた指の上に額を乗せて項垂れる。ざばざば波を蹴っていた筈の音が聞こえない。心音がうるさいせいだ。
「……なにが駄目だと言うんだ」
「賈充、俺から逃げようとしてるだろ」
 両手首を、がっと掴まれてバランスが崩れた。そのまま抱き寄せられることを無意識で期待した賈充は、己を恥じた。上目で恐る恐る司馬昭を伺えば、その眼差しに多少の苛立ちが見て取れた。
 あっさりと解放されて、賈充は半歩下がった。すぐに俯いた。怒りが湧いてくる。こんなに必死に隠しているのに、今更公にさせようとするのはどうしてなのだ。
「逃げないで」
 さらに床をすらせて退こうとした脚を止める。優しい声にどきりとした。また、手を掴まれる。汗ばんでいるのを悟られたくない。
「おいで」
 子上、いい加減に――顔をあげて声を張り上げようとした賈充の唇を、司馬昭はいとも簡単に奪った。

 現在に至る。
 司馬昭の唇が賈充の髪を器用にひと房耳にかけた。そのまま、再び耳たぶを噛む。びく、と賈充の全身が跳ねた。もう沸騰した薬缶のように、湯気が出そうでたまらない。
 司馬昭の右手が後頭部をしっかりホールドして、また顔面が迫った。賈充が目をきつく瞑ったのを確認して、司馬昭は切なく笑った。そしてそっと唇をつける。心なしか唇まで熱い。
「んぅ」
 漏れた声があまりにも必死で、賈充はもう、頭が真っ白になってしまって硬直した。司馬昭が唇を割って舌を滑り込ませてきたのだ。後頭部の右手の親指の腹が、黒髪を執拗に梳く。
「賈充」
 一瞬離れて、呼ばれた。賈充は思わず目を開いてしまった。
(子上……っ)
 心で返事をした。体温が、匂いが、こんなにも近い。混乱を加速させるように司馬昭がぐっと舌をねじ込んできた。ざらざらする。
「ん……」
 賈充はもう、わけがわからなかった。今の鼻にかかった声は俺じゃない。子上だ。
(子上、)
 お前もこういう声出していいんだぞ、と言いたいのだろうか。それを許された気になれば、心にかかっていたたがが全て外れたように感じた。そうしたら、左手が動いた。そろそろと司馬昭の右手に伸びる。
「ん、ふ、ぅん」
 司馬昭の舌が、しつこく賈充の上顎をノックする。男を感じさせるキスに、賈充はへたりこみそうになりながら喘いだ。ざらざら、これが子上の舌。――気持ちいい。
(子上、子上、子上)
 使い物にならなくなった頭で、壊れたレコードみたいに何度も名を呼んだ。キスだけでこんなにとろとろになってしまうのは、相手が子上だからだ。
 好きなのだ。
 子上が大好き。
(子上)
 司馬昭の右手が、ふいに動いた。賈充の左手の指に指を絡ませて、逃がさないとでも言いたげに握り締めた。そのまま、手すりの上へ。賈充の手を下に、強い力で押し付けた。
「ふぁ……っ」
 長いキスの終わりに、司馬昭は「なあに」と囁いた。荒い息を吐き出す賈充は、とろけた瞳をぼんやり揺らした。
「なあに、とは」
「ずっと呼んでたんだろ、心の中で、俺のこと」
 かああ、と頬が紅花のようになる。そうこうしているうちに、司馬昭は右手をポケットに突っ込んだ。素早く取り出した銀のリングを、手すりの上で絡めたままの手に近づける。
 賈充は抵抗できなかった。する必要もなかったが。ゆっくりと薬指に冷たい輪が通っていく。
 そのまま手を持ち上げられ、ちゅっと啄まれる。もう立っていられなくて、賈充は司馬昭の厚い胸に身を預けた。
 船はいつの間にか復路を通っていた。港が近いぜ、と囁かれて、賈充は、ん、と頷いた。
「楽しみだよな、ホテル。どんなとこなのか」
 明るく言われたって、今までどおりの友達としての意味では取れない。
 ああ、なんてずるい男だろう。
 俺たちは、一体どこへ行くのだろう。
(どこへだって行く、が)

誰が恋などするものかしら



こういう程度のえげつなさです。

 鉄の味が広がる。賈充は、唇を噛まれたことに気づくのに、数秒を要した。
「しじょ」
「これでもか?」
 血が顎を伝う。拭う間もなく、司馬昭の顔は降下し、今度は賈充の乳首を噛み千切らんとする強さで噛んだ。
「ぐあ!」
「これでも俺が好き?」
 淡々と問いながら、司馬昭は充血しきった尖りを舌先でつつく。傷にあたたかい唾液を塗りこまれて、ひりひりする。だがそれは痛みだけではなく、
「ひ、うぅ……!」
 司馬昭が顔をあげた。賈充は、とっさに唇を噛み締めそっぽを向く。
「なに、お前……もしかしてこれ気持ちいいの?」
「ひう……!」
 くに、と傷ついた乳首をつまめば、賈充はタイルの上で身体を跳ねさせた。司馬昭はすかさず、再び乳首を口に含む。赤子のように、音を立ててちゅぱちゅぱ吸った。
「ん……、んん」
「淫乱だなあ」
「そこ、で、しゃべるな……ぁ」
 ぐっと掴んだ司馬昭の前髪も、水気で重たくなっている。賈充は荒い息を詰めようとしたけれど、苦しくなって、すぐにぜいぜいと吐き出す。はやく乳首に飽きてしまえとも、やめないでほしいとも思ってしまう。腰がむず痒い。
「そんな、胸に顔押し付けなくてもしゃぶってやるって」
「ふ……押し付けて、ない……」
 弱々しく否定すれば、司馬昭に、抵抗の暇もなくうつ伏せに押し倒された。タイルの冷たさが、火照った身体に気持ちいい。ぼんやりしてきた頭で、賈充は思う。
「なあ賈充、俺のこと、好き?」
「……ん。好き……」
「これでも?」
 ぱん! 最初に認識したのは、破裂するような音。数拍後、じわじわと熱と痛みが実感として広がる。臀部にだ。
「子上……っ?」
「おしりぺんぺん」
「なにをっ……? 子上っ!」
 ぱん、ぱん。戸惑う賈充をよそに、司馬昭は何度も平手で尻たぶを打った。白い尻に、赤い掌のあとがつくのを、司馬昭は満足げに目を細めて見た。
「賈充は悪い子。おしおきが必要だな」


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