持田とアンパンチョコレート






疲れた。
もうこれ以上ないほど。



「持田君、進路も決まって暇でしょ?たまには部活に顔だしてよ。朝練もあるから。」

昨日の夜、久方ぶりに部の顧問から連絡があった。
なんだよ、とめんどくさいながらも、顧問との関係は特に悪くなかったのでメールを見たらこの内容。
実際重いため息が出てしまった。
確かに、推薦で大学の受かった自分は他のセンター組みと比べたら暇だが、いや結構暇だが。
だからって呼び寄せるかな・・・。
もう外の人間だから、と遠慮してた部分もあるのに。
まあいいか。
久しぶりに同じくらいの相手のいる剣道がしたかった。このごろは師範の道場で、師範相手に試合してるか、塾生に剣道教えてるかのどちらかだったから。
そう考え至って、顧問に『明日おじゃまします.』
と返すと、『何他人行儀みたいなこといってんの。』と返された。
それになんと無しに苦笑して携帯を閉じた。

やっぱ断ればよかった。

自分は忘れていた。
今日は自由登校でなく、学年登校日だったことを。
この時期剣道部朝練はええんだよなあ。
なんと朝の5時からだ。
自分は移動とか準備もあるので4時起き。
朝練終わったら、放課後まで適当に休んでまた練習に参加しようと思ったのに。

「疲れた。」
「年甲斐もなく無茶するからだね。自業自得だよ。」
自分の隣で弁当に箸をつける雲雀は容赦ない。
朝練2時間半の間中ずっと、持田先輩、おれと試合してくださいをほとんどの剣道部員から言われ休むことなく18人と強制試合させられてみろっての。
いくら雲雀だって疲れ・・・。
なさそうだな。むしろ嬉々として噛み殺してそう。
並盛の覇者はまだ健在で、高校になって少し度を越したことは控えてるものの。(こうやって日々授業に出てることが奇跡だし)たまにふらっといなくなって傷をこさえて帰ってくることも度々だ。(しれに了平も同じことがちらほら・・・。)
たく、二人でなにしてんだか。
二人は、高校生の基準を超えて強い。
体力も呆気にとられるくらいある。どうせ自分は高校生の剣道日本一ですよ。
そう考えると言い返すのも、めんどくさい。
「・・・疲れた。」
なので現状を伝えるだけにとどめておく。
「一回言えばいいよ。うっとーしー。」
そうくると思ったけど。雲雀はやっぱり容赦ない。
労りを求めた自分が馬鹿だったのだ。
なんだか泣きたい気分で弁当をつまむ。3限に空腹に耐えかね購買でパンを買い食べていたのでそこまで食う気が起こらない。
今日のメニューも悪い気がする。から揚げと生姜焼きじゃあなあ。
持田は食べるのをあきらめ弁当をしまおうとする。
「食べないのか持田。」
それまでもくもくと弁当にがっついていた了平が聞いた。
「なんか食う気がおこらなくてな。」
夜練のあとにでも食うよ。
包みに弁当を入れ、御茶を飲む。
一服つくと、了平がごそごそしてるのが目に入る。
「なにしてんだ?」
「いや・・・確か朝京子が・・・」
「?」
どこやったかな・・といいながらカバンをかき回す了平を雲雀と一緒に見守る。
しばらくして、あった、あったといって了平が取り出したのは袋に入った徳用チョコの詰め合わせだった。
「疲れには甘いものがいいといってな、朝京子がくれたんだ。」
説明を加えて自分にそれを差し出す了平。
「あ〜、俺甘いのはちょっと・・・。」
「まあまあそういわずに食っとけ。」
押し切られる形で自分の手のなかに盛られたチョコは一つ一つが包装されていた。パッケージは、持田もしっている頭がアンパンで出来ている人気キャラだった。
「・・・いただきます。」
その敵であるバイキンの頭を裂くように包装を破る。
出てきた茶色の物体は日頃進んで手をつけないものだが、その甘い匂いにすこし癒される。
口に含むとやっぱり甘い。だけどその甘さに対する不快感はなく、逆にじんわりと胃に吸収されていく。
うまいなあ。
ぼんやりと思いながらもう一つ。口に入れる。
「雲雀もくうか?」
「ん・・・。」
了平は雲雀にもすすめているらしい。
雲雀は甘いもの好きだったかな。
「・・・どうした持田。」
「なんか眠い・・・。」
「寝ればいいんじゃない。」
5限は自習でしょ。てゆーかこの時期学校に強制登校の意味がわからない。
お前学校大好きだったはずだろ!って・・・つっこもうかな・・・。
どうしよう。眠いな。
「京子にありがとうっていっておいてよ了平。」
「うん。」
ああ、俺も言ってもらわなきゃ。京子かあ。そういえばあの子ももう高2か。
中二のときの自分の暴挙から疎遠だけど・・・。
元気なんだろうか・・・。
まだちゃんと謝ってないな。
謝ればまた、普通にしゃべったりできるのかな。
・・・ねみい。
「・・・もっちー寝たの?」
「・・・・・・」


「寝たらしいな。」
「無理するからだよ。結構いそがしいくせにさ。」
「・・・雲雀。」
「なに。」
「いや・・・。」
「了平。まだ。剣介にはいわないよ。」
「うん。」
「いうつもりもないよ。」
「しかし・・・」
「沢田の考えがどうであれ。僕は剣介にいうつもりはないよ。」
「・・・わかった。」
「口調、戻してよ。君が静かだと気味悪い。」
「そうだな。・・・チョコくうか?」
「うん。もらうよ。」

二人で俺のよくわからない会話すんなよな。
ってつっこもうかな。どうしよう。でもさ。ねみいんだよ
雲雀が自分のことをちゃんと呼ぶ日はいいことが起こらない。
了平が静かになる日はいいことがおこらない。いままでの経験でしってるんだよ。
今は、知らないふりをしてやろう。
それでふいに言ってやろう。
『沢田が俺になんだって。』
びっくりすっかな。
お前ら俺に隠れてなにしてんだよって。
言ってやろう。
起きたら。眠気がなくなったら。
言ってやる。

「お前らさ。俺になんか言うことあるだろ。」

秘密とか、気分わりーんだけど。
二人はどんな顔をするだろうか。
いやだねもっちー寝たふり?とか。
す、すまん持田、とか。
どっちにしろ多分。話してくれるだろう。
気まずい顔しながら。
想像すると笑えた。

「うわっもっちー笑ってるよ。きもちわるい。」
「うわ・・・またにたにたと・・・。どんな夢みてるんだ。」


ちくしょう!!!お前ら!絶対吐かせてやるからな!!




持田は眠いとあまえたになるといいなって思った話し。


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!