雲雀とラーメンの特集

雲雀が普通に授業受けてるあたりパラレルくさい。三人は並盛高校の三年生です。







「ラーメン食べに行こうよ。ラーメン。」
「はあ?」
「だからラーメンだって。」

意外な人物から意外な申し出。
帰り支度をしていた持田は、不信感と、物珍しさから自分の横の席にうつ伏せている男を見る。
「・・・お前ラーメン好きだった?」
「特に・・・。でも今すごく食べたい。」
そういった雲雀は「特にとんこつが。」とため息混じりに呟く。
―珍しい。
持田はカバンのチャックを閉めながらもう一度思った。
こいつとのつきあいは長いが、こんな風に食べ物を欲しがる雲雀を始めて見た。
いつもは眼の前にあるものをなんとなしに食べるのがスタンスみたいな奴だから。
もちろん味に好みがあるのは知っているが、それでも雲雀が自分からなにか食べたいと言って自分を誘うのは初めてだ。
―ファミレス行ったらハンバーグだけどな。
意外にも、ハンバーグが好物の男は、学校帰りファミレスに寄るとメニューも見ずに、ハンバーグ、と言う。
いやハンバーグにも種類あるから、とりあえずメニュー見ろよ。と言って聞かせても、「目玉焼き乗ったやつ。」と言い切る。
どんだけ目玉焼きハンバーグが好きなんだ、と思ったが、そんなやりとりを何回も繰り返すにつれ、メニューを見るのがめんどくさいだけ、と言うか選びきれないだけなんだと解かった。
「・・・食いにいくか。」
「うん。」
じゃあ決まりと、言う風に雲雀は立ち上がりカバンを担ぐ。
「了平も呼ぼう。」
言外に了平に連絡をしろ、ということなので持田ははいはい、と言いながらカバンから携帯を出す。
携帯は短縮2、で了平の携帯に繋がるように設定してある。
7コール後に出た了平は「どうした持田。」と聞いてきた。
「いや雲雀がラーメン食いたいからラーメン屋いこうって。お前もいこうぜ。」
「おう。じゃあもう少し待っててくれ。」
「何、用事中?」
「いや、まだ帰りの会の途中・・・。」
「えっ?」
聞き返すのと同時に、電話の向こうから、笹川くん!!と、了平の担任の教師の叫び声が聞こえた。

女教師の絶叫を最後に電話は切れた。
唖然として、携帯を閉じることを忘れた自分に、雲雀が怪訝そうに話し掛ける。
「・・・どうしたの?」
「なんか・・・了平、帰りの会の途中だった。」
「えっ今話してなかった?」
「いや、なんか帰りの会の途中だった。」
あはは、何それ。笑う雲雀に乗っかるように、自分も口元を緩める。
だから7コールも間が開いたのか。
「クラスの前で待ってやればよかったな。」
「そうだね。でも普通は出ないよね。」
「だよな。」
顔を見合わせ笑う。廊下には人通りがあまりない。
自分達のクラスから了平のクラスまでは4つの空きがある。
自分達は6組、了平は1組だ。
年度始め、張り出されたクラス表に、ブーブー文句言っていたなあ、と少し前のことを思い出す。
俺一人離れた。
了平はそんな子供じみたことを言っていた。
「・・・雲雀さ、なんでラーメン食べたいの?」
「んー秘密。」
なんだそりゃ。そう粒やいた所で、1組の前についた。
「大体ね笹川くん。学校内では携帯の電源を切っておかなきゃだめでしょう。」
聞こえてきた教師の声に、雲雀と眼を合わせ苦笑する。
どうやら了平はお小言を食らっているようだ。
「すいません・・。」
了平が謝ったのが聞こえて、それに続いてクラスに笑いが起こる。
了平だっせー、と揶揄が聞こえそれに、ぬう、と了平が応える。
なんだ、うまくやってんじゃん。
安堵となにか少し残念に似た感情が渦巻いた。教室からはそれじゃあさよなら、と教師の明るい声が聞こえた。
一番に教室を出たのは、女教師だった。扉すぐ前にいた自分と雲雀に少し瞠目したが、すぐにさよなら、と声をかけてきた。
さよなら、と少し頭を下げる。雲雀は頭を下げただけだった。
教師が帰り緊張感の解けた教室内で、クラスメートにからかわれてる了平が目に入る。
こちらの存在に気付いた了平は、おう悪いな、と声を掛け、クラスメートにじゃあな、と言った。
「で、なんでラーメンなんだ雲雀。」
だしぬけにそう聞いた了平に、雲雀は、秘密、とまた言った。
秘密にすることでもねーだろ、と思ったが、雲雀なりの考えがあるのかもしれない。
何か雲雀的に沽券に関るような。
「まあ俺もラーメン食いたかったけどな。」
と特に気にしたふうでもなく了平が言った。
「あそうなのか?」
「昨日、テレビで全国のトンコツラーメンの特集してたからな。」
「・・・ああ。」
なるほど。そうゆうことか。したり顔で雲雀の方を向くと、思ったとおり雲雀はバツが悪そうに眉をしかめていた。
「僕だって、テレビくらい見るよ。」
「あははは。」
別に言わなくてもいいのに、変なところ素直な雲雀がなんか妙におかしくて笑えた。
うるさいよ、と足を蹴ってくる雲雀の顔が少し赤かったから、また笑えた。
行きたいところ決まってるのか?と了平が言うと、雲雀はすぐにある店名を言った。
ああ、地元の店が特集されてたんだ、と思うのと同時に
「ああ、昨日テレビに出てたな。」
と了平が言うものだから。
空気呼んでやれよ、と呟いておいた。



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