火曜日は寝る日





自分の属する組織には明確な休日は存在しない。
仕事が重なるときは重なるし、無いときは暇を持て余すくらい仕事がない。
何週間も続くSランクの任務がいくつも重なったと思ったら、護衛や調査などのBランクの任務しかこないこともある。
そんな職場だから組織の体勢が定休制になれるわけもなく、働くときは働く、暇なときは休むというアバウトな休日の取り方に上下関係なくなっている。
しかも任務はその特性に会わせて任せられるので仕事の波が皆それぞれちがい休暇が重なることは少ない。
そんな理由から、自分とザンザスの休暇が重なったという今日のシチュエーションはとても珍しい。
1年に数回あるかどうかくらいの確率だといってもいい。
それを喜ぶほど自分達は甘い関係ではないが、まあ何となくボスの部屋に足が向く。(あくまで何となくだぁ)

「ボスー、入るぜぇ。」
珍しくノックをして扉を開ける。多分起きていても寝ていても自分の存在には気付いているのだろうから無用なことなのだろうが、そこはマナーだ。そんな些細なことでボスの機嫌を損ねるのも得策ではないし。なにより休日までボスに殴られるのは勘弁だ。
しかし扉を開けた部屋の中に男の姿はなく、男の濃い気配があるだけだった。
「まだ寝てんのかぁ?」
いつもはザンザスの執務室になっている部屋の奥にある扉に手をかける。その奥がザンザスの寝室となっている。ザンザスの気配はそこから発せられていた。
「?おおぃボスー?」
返事がないのが気に食わない。気配がこれだけだだ漏れになっている所をみるとザンザスは起きているはずなのに。
無視を決め込んでいるのか?
そんなことを考えながら掴んだドアノブを引く。枕の一つでも飛んでくるかと思ったが自分の元に飛来物はなく、代わりに穏やかな風が頬を掠めていった。
「窓開いてんじゃねーか。」
珍しく窓が開けられていた寝室のベットの上にはザンザス。
「・・・寝てんのかあ?」
気配全開で?ありえねえ。
「ボスー。寝たふりかぁ?」
「・・・うるせえ・・。」
「起きてんじゃねえかよ。」
返事くらいしろよなぁ。シーツを捲りながら小言を言っても怒気が感じられない。
「疲れてんのか?」
ザンザスがこういう態度をとる時は大抵本気で眠い時だ。ザンザスには眠いイコール疲れた、という方程式が体内にある。それが適応されると言うことはこの男の疲れが限界にきていると言うことだ。
「今日はずっとねるか?」
「・・・ん・・。」
「・・・そっか・・。」
もったいない休日の使い方だと思ったがこれは仕方ない。
以外にもヴァリアーで一番仕事をこなしているのがこの男だ。たまの休日、寝かせてやった方がいいだろう。まあ俺は退屈だが。(決して残念がってはいない。)
「・・・お前も寝ればいいだろ・・・。」
シーツに埋めていた顔を少しあげてザンザスが寝言の様に小さく呟いた。
「・・・・冗談だよな?」
野郎二人が寄り添って昼寝・・・それは寒いぜボス。ガキかよ。
そうもらせば見慣れた皺が眉間に寄せられた。
「いやなら出てけ・・・眠い・・・。」
その呟きをきいてあながち冗談ではなかったのか、と頭を抱える。ボスの休日に誰かがここまで入ってくるとは考えにくいが、これはモラルとコモンセンスの問題だ。
やるわけでもない、暗闇でもない。そんななかこの男と寝るのはなかなかに勇気がいる。
答えに渋っていると、答えを急かす様な視線を向けてくる。

「・・・・狭いからって蹴んなよな・・・。」
「お前こそ暴れんなよ。」
そう口を満足そうに歪めながら言う男を睨み、シーツの中に潜り込むと男の体温で暖められたシーツが思った以上に心地よかった。
すっ、と一息つけばもう眠気がやってきた。
背中にまわされた男の腕がむずがゆいが、眼前に見える寝顔は悪くない。
「Buonanotte.BOSS.」

呟くと笑みの形をした口元が小さくsi、と動いた。





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二人が別人だと思いました。
ボスは甘えん坊だからスクアーロと寝たかっただけだよ。




あきゅろす。
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