尾骨が痛い。
目覚めて一番の感想にしちゃこれはひどすぎる。
糊のきいていたんだろうシーツはいい感じにヨレヨレになっていて心地いい。
目に入る天井が自分の部屋のものでない。ついでにあの男の部屋のものでもない。
大体、組織の屋敷はこんなに安っぽい装飾をしない。窓辺に花を飾ったりもしない。クモの巣こそないがもっと古く、重厚な感じがする。それは屋敷全体を通していえることだ。
そう考えるとここは自分の住む屋敷ではないらしい。
寝返りをうとうとすると身体が思う様に動かない。ついでに尾骨以外にも違和感がある。
―う゛お゛お゛い痛えぞお・・・
いつもの様に起きようとすれば、身体のあちこちに鈍痛が走った。片腕で踏ん張って起き上がろうとすると肩が震えて起き上がれない。
俯せに寝ようとすると肋骨がすれて痛み寝れもしない。
―何ごとだあこれは・・・
この状況に至るまでの記憶がない。自分にしては珍しい失態だ。
頭は痛くない。吐き気もない。酒が原因の沙汰ではないらしい。
服は着ている。腰は痛いが、切り傷の様な痛みだ。どうやらそれ関係の鈍痛でもない。
では何だ。
―任務かぁ?
自分の周りに殺気は感じられない。むしろ人の気配がない。静かだ。
第一、人の気配がすれば勝手に目が覚めるのだし、自然に目が覚めた所を見るとここは敵方の領域ではないらしい。
―夢か?
結局目覚めてから変えることのできなかった姿のまま思う。
それはないだろ。夢ではない。夢にしてはシーツの肌触りがリアルすぎる。
―もうどうでもいいか。
敵の手中ではないらしいし、殺気もない。体中が痛いが我慢できないほどのものでもない。
瞼が落ちてくる。部屋中に燦々と降り注いでいる日光がすこし陰る。
静かだ。
気持ちがいいと素直に思う。人の気配が全くしないのもいい。ゆるゆると、眠気が手招いているのが解る。
―寝ちまうか・・・。
じぶんが寝ていると舌打ちしながらけり起こす人物もいないし、朝よーとけたたましく叫びながらシーツを捲る同僚もいないようだ。
―ねるか・・・。
目を閉じる。
視界が黒くなる。
眠りに落ちる瞬間はあまり好きではないが、今は何故か心地よいと感じた。
シーツに潜りこむとまた身体が軋んだが眉をしかめる程度だ。
スン、とシーツの匂いを嗅いだら何故だか安心した。
部屋に風が吹いた。
窓が開いていたらしい。
カーテンが揺れるのを感じた。
それが意識の最後。もう何も感じない。
ブラックアウト。
何の気配も感じない眠りは心地いい。
……………………………
激しい任務あけで記憶混乱&前後不覚のスクアーロ。
人払いした別荘はボスからのプレゼンツ。
花はルッスさんから。
シーツのコロンはボスの体臭。
そのうちボスが乗り込んでくる。お昼寝は2時間で終了。