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金色の稲穂。
揺れて、ざわめき、揺らめいて。
その中で一人、小さな女の子。
二ノ姫と呼ばれる、幼くて可愛い、姫。

彼女は宮内で嫌な事があると、時折抜け出す癖がある。
そう柊が話しているのを聞いた事がある。
俺はそんな事を思い出しながら、彼女を見つけた。


采女達が二ノ姫が見当たらないというので、何時もの面子が捜しに来た。
今日は何だか運が良い気がしていた俺は、今日は一番初めに彼女を捜せる気がしていた。

駆け出し、金色の稲穂輝くこの場所へ。


彼女はあの綺麗な髪色。
この金色に輝く場所では見つかりにくい。
けれど目には自信があった。




「―――あ、」




二ノ姫。
あの長い髪を風に靡かせて、立っていた。
誰も見つけていないらしい。

…今日は運が良い。
朝から調子の良い事ばかりだからだ。
だから今日は彼女を最初に見つけ出すのには自信があった。

けれど。
(ああ、でも、どうして。)




「風早ぁ…っ風早ー…」

「…姫、見つけましたよ。もう大丈夫、寂しくありませんよ」


(なのに、どうして。)




どうして、勝てる気がしないのだろう。

風早の名を呼んだ彼女の元へ、直ぐに現れたのは風早だった。
そして彼女を軽々と抱き上げ、あやすように背中を軽く叩いてやる。
あの金色の髪に、優しく触れる。
優しい風早の、優しいあやし方だった。


今日は運が良かった筈だった。
だから最初に彼女を見つけるのは、自分だと思っていた。
けれど何故か。
俺は風早に勝てる気がしなかった。

稲穂が揺れる。
風に紛れて、声が届く。
風早が優しくあやす声が届く。
二ノ姫の泣き声が聞こえて届いて。
無性に、この情景が胸に響いた。








求める名前は自分ではない。
求めている声は恐らく自分の名前を呼ばない。
同門の、彼女の従者の名前だけを呼ぶ。

あの情景は胸を打つ。
どうしてだろうか。
どうしてだろうか。
睫毛を濡らしたのは、自分の涙だった。
















君が呼ぶ名前は、
>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>
あれがきっと、初恋という名の代物だったのかもしれない。


忍人の話。
同門は一ノ姫とも二ノ姫とも多少は交流があったんじゃないか?と妄想した話から派生した代物。
初恋と気付く前に初恋は終わる。


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