世界はモノクロで出来ているのだろうか。 不意に那岐はそう思った。 何故なら目の前の世界は、多くの色で彩られているはずなのに。 目敏い位に白黒だ。 彩られた物なんて、存在しないとさえ、錯覚しそうだった。 那岐はぐったりとオープンカフェで休憩しながら。 街中は賑やかで、那岐からしてみれば喧しい位だ。 風早に頼まれた本を買いに行ったのが悪かった。 珍しく断る事が無かったのは、風早自体が学校に行かなくてはならなくて。 仕方なく。 次いで暫く食事当番を代わってくれるというから。 だったら、と渋々ながらも頷いてしまったのが悪かった。 (今日は運が無い日なのかもな) そう思う事にした。 でも思っても、この喧騒から中々抜け出す事は出来ない。 せめて短く考えても、この通りは出口まで100メートルは残っているだろう。 第一、先程から人に見られるのにも良い気はしない。 那岐は外見が目立つ方だから、余計に見られているのだろう。 更に整った顔立ちだ。 見られているのも頷けるだろう。 手の中にあるカフェラテが苦いと感じる。 目の前は変わらずに白と黒にしか見えない。 喧騒が耳に入る。 静かな所で昼寝がしたい。 早く、家に帰りたい。 (風早に―――…) 「那岐!」 モノクロ。 世界はそうなのかもしれないと、思っていたのに。 色褪せる事の無い。 彼だけが、鮮明に色付いて見えた。 モノクロの世界で出来ているならば、きっと彼の周りは世界が違うのだろうか。 那岐に見える世界は、彼だけを色付かせる。 目が痛くなる程。 逸らしたくなる程。 鮮明な、 「見つけましたよ」 「風早…。何で、学校は?用事は?」 「終わらせて来ました。そしたら那岐がまだ帰って来てないって言われたものだから。迎えに来ました」 少し呼吸を粗くして。 目の前で締めていたネクタイを指先で緩ませる。 帰ってから急いで来たのか、学校に向かった時のままだった。 相変わらずの人の良さそうな笑顔を浮かべて。 差し出された片手に手を乗せない。 こんな所で手を繋ぐ、なんて、子どもではない。 那岐はそっぽを向きながらも立ち上がった。 帰ろう。 そう小さく呟いた。 カフェラテは既に冷めきっていて、コップはそのままにした。 一応買えた頼まれた本を風早に渡すと、那岐は伸びを一つする。 未だ喧しく感じる。 けれど先程よりは不快感はない。 それはきっと、風早の声が混ざって聞こえるから。 「那岐。今日の夕食は何が良いですか?」 「…夕食より先に、昼寝させてよ」 那岐。 喧騒の中で。 近くに聞こえる声。 ざわついた世界の中で。 風早の声だけが、鮮やかに聞こえてくる。 人込みに酔ったフリして。 信号待ちをしながら、風早の肩に頭を寄せた。 (人が居なかったら、抱き締めているのに。) なんて、思いながら。 鮮やか人の傍で。 鮮やかな声を聞かせて。 In the world of black and white >>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>> 「何で僕の居場所がわかったんだよ、風早」 「…秘密です」 (何故なら―――那岐は、俺には鮮やかに見えるから) 那岐×風早。 主人公と那岐の事は直ぐに見つけられる風早とか。 那岐の曲聞いたらこんな感じになりました(´∀`v In the world of black and white(モノクロの世界の中で) [グループ][ナビ] [HPリング] [管理] |