絵本を開けば、幸せがそこには描かれていた。 温かな感情と人と。 触れ合える時間のようにも感じていた。 まるで、目の前の彼女に触れ合えたような気さえ、した。 目の前の彼女は、絵本を見せて欲しいと時折やって来る。 近所付き合いとでも思っているのだろうか。 はたまた、本当に絵本が読みたいだけなのだろうか。 表情は絵本の登場人物のようにくるくると変わるのに。 中身はよく判らない。 「珍しいね」 「何が?あ、これ借りるね!」 「何がって…絵本なんて滅多に読まないでしょ」 「うん。私は純文学の方が好きだしね」 「じゃあ、」 「玲司がね、読みたいんだって。珍しく本読みたいって言ったんだけど、絶対小説は読まないと思ったのよ」 (ああ、なんだ。) (そういう事だったのか。) 話を聞いてしまうと、何だか胸が痛みを訴えた。 何でもない、と口では言っていた分だけ。 その分だけ。 好きであると感じた感情が、自分を追い詰めた。 彼女は玲司と恋人で。 ロゼを含め、一緒に居る事が多いのを知っている。 彼女にとっての物語のヒーローは、玲司で。 自分ではないのだ。 物語の主人公になる事も出来ないのだろうか。 何時までも燻った感情に反発しているだけの、自分では。 手元の絵本は、幸せで溢れているのに。 一人でその幸せを得る事も出来ない。 (物語の主人公にも、なれない、なんて。) 自分の物語なんて。 滑稽な物語になりそうだと思った。 It is not possible to become the hero of the story. >>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>> 何時かなれるか、なんて。 愚問だね。 マコトの話。 マコトは自分で自己完結とか、普通にしてそうですよね。 It is not possible to become the hero of the story.(物語の主人公にはなれない。) [グループ][ナビ] [HPリング] [管理] |