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突然の雨だった。
遠雷かと思えば、その数分後には雨が降ってきた。
きっと通り雨なのだろう。

しかし困った事に、雨を凌げる道具を二人は持っていなかった。
雨が降るなんて思ってもみなかったからだ。
通り雨なのだから、と、結局寺院の軒下を少しの間借りる事にして、二人は並んで立っていた。


更に困った事が起きた。
それは頼忠の事だった。
彼は余り話をしない。
…と、言うより、元々寡黙な男なのだ。

何を話そうか迷っていた。
態度は優しい人だというのは解っている。
けれど話相手となると、余り向いていない。
つまり彼女は何を話そうか悩んでいるのだ。




「神子殿」

「―――え?」




雨のように突然だった。


頼忠は肩を抱くと、自分の方へと引き寄せた。
優しく、そっと。
けれど勢い余って、頼忠の腕の中に収まってしまう。




「御召し物が、濡れてしまいそうだったので。失礼させて頂きました」




柔らかく笑う、その顔が。
何だか堪らなく、胸を揺るがせていた。
動悸が激しくなる。
きっと顔が真っ赤なのだろう、とも、実感していた。

思わずその顔を見られたくなくて、俯いた。
神子殿、と呼ぶ声が鼓動を早くさせる。
甘く優しい声は思考回路を痺れさせるには充分だったのだ。




「神子殿、お身体が冷えてしまいます。本日はもうお帰りになられますか?」

「えっ…」

「私は、」

「?」

「不謹慎かもしれませんが…私は、もう暫くはこうしていたいのですが」




ぽつ、と。
雨が葉を打つ音を響かせた。
それが耳には大きく響いて聞こえる。
頼忠の声は、甘く、鼓膜を震わせた。

神子殿。
その声がより近く、響いて聞こえて。
成す術もなく、頼忠の腕の中へと引き込まれていった。








それは、通り雨の甘い罠。













Shower
>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>
同じくらい早く、鼓動が聞こえてくる。


頼忠さんは確信犯ですよ←
個人的に障害のある恋の頼忠さんは凄いそんな感じだと思ってます(笑)
雨だから迎えに来たイサトくんが見てしまって顔真っ赤にしてれば良いよ!

Shower(通り雨)


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