「…来る。」 風早は空に目を遣った。 その目は普段の穏やかな彼とは似ても似つかない。 鋭く、若干獲物を狙う鷹の如く、刺さる視線だった。 空は明るい。 快晴といっても良い。 とにかく晴れているのだが。 しかし、それを彼は見上げていた。 その内、雷と共にやってくる。 洗濯物を干していた彼は動きを止めた。 那岐はそれを見上げた。 立ち上がっている彼はとても背が高いから、空を見上げるように顔を上げた。 風早は、恐らく自分がそんな顔をしているなんて、気付いていないのだろう。 無自覚なのだ。 その鋭い視線も。 那岐はその顔が好きだった。 (気付いてないから、可愛いヤツなんだなって、思うんだろうけど。) 「あのさ、」 「何ですか?今日は俺の番ですよね」 「そうなんだけどさ」 「…那岐?」 「風早って、そんな目するのって無自覚でしょ?鋭いっていうか、人を射抜くみたいな目」 こうして話している間にも、青空が急変していく。 闇を従えるかの如く、曇っていく。 そんな空を背景に、那岐は風早を見つめていた。 その視線の先の風早は、さっきとは打って変わって、相変わらずの穏やかな表情だった。 那岐の言葉を聞きながらも、洗濯物を遣りかけたままで室内に足を踏み入れた。 那岐はその穏やかな視線が好きだった。 自分を認めてくれる視線だからだ。 けれど先程の目は好きではない。 自分以外のものを、あんなに鋭く、射殺されそうなまでの眼差しは。 (自分には決して向けられないものだから) 嫉妬。 自分以外の人があの視線をされるのが嫌だ。 まるで風早がそれに執心しているみたいで、嫌だった。 我ながら子どもじみた発想だと思いながらも、事実なのだと思っている部分もある。 事実は決して捩曲げられないのだから。 諦めに似た、納得だった。 「そうですねぇ…那岐は何時も突き放すような目をしていますよね」 「え、」 「そういう那岐の目、俺は好きですよ?」 ねえ、と。 僅かに開いた唇から声が漏れた。 その唇が、何だか誘っているようにも見えていた。 (まるで自分の所まで這い上がって来いと言わんばかりの) (突き放しても、待っていてくれるその眼差しが、好きですよ。) あなたの眼差しが好き! >>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>> 「では、行ってきますね。後は宜しくお願いします」 「…いってらっしゃい」 那風。(と言い張る代物) 二人の関係は好き合ってても基本ドライなのかな…と。 好きとか告白しても、数秒後には晩御飯の話してる、みたいな(笑) とりあえず現代時ですね。 [グループ][ナビ] [HPリング] [管理] |