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「か、会長とはっ……どうなんだよ?」
……そのネタ、まだ続いていたんですか。
予想外のその問いに、驚きと呆れと、諦めの気持ちが生まれる。ちなみに諦めが一番強い。
「別に……会長とは、元々何ともありませんでしたし」
「生徒会室には通ってないのか?」
「機関絡みの用事以外では、あそこに向かう事はありませんね」
「そう、か……」
彼は息を吐きながら、椅子の背もたれに体重をかけた。
そしてまた無言の空間。
……何だったんだろうか。
持っていたトランプは、いつの間にか机の上に投げ出してしまっているため、手札がもう見えてしまっている。ゲームの続行はできないだろう。
何か考えているような仕草の彼を眺める。
そして一つの可能性に辿り着く。
もしかして、もしかすると……やきもち?
そんな訳無いと思いながらも、微かに夢を見てしまう。
「……あ、あの」
我慢できなくなり、僕は口を開いた。
もし僕の考えが正しいのならば、これは彼との関係を進めるチャンスなんじゃないだろうか。
「さっきの」
「俺には美学ってもんがあるんだ」
突然、僕の言葉を遮って彼が喋り出した。
思わず言おうとしていた台詞を飲み込んでしまう。
「……び、美学ですか?」
そんなの、テレビの中や紙の上でしか聞いた事が無い。
「そう、美学だ。っても俺個人のこだわりと言うか、ポリシーと言うか」
「はぁ」
彼が何を言おうとしているのか、皆目見当が付かない。
「お前は、会長が可哀相だと思わないか?」
「はぁ?」
可哀相。確かにあなたの一方的な妄想に巻き込まれて、少し可哀相だとは思いますけど。
本人はまだ何も知らないのだから、それはそれでいいのではないだろうか。
そう、思ったのだが。
「今回、お前が俺を選んでしまったから、会長は独り身になってしまった訳だ。可哀相だろ?」
至極真面目な顔をして、僕を見る彼。

――……これは、彼の脳内で何かストーリーが出来上がってしまっている?

僕があなたを選んだから……って、僕には元々あなたしか選択肢は無かったのだけど。
その物語の中で、僕は一体どんなキャラクターに仕立て上げられてしまっているのだろうか。まさか二股をかけていたとかいう設定じゃあないだろうな。
「俺、思うんだ。三角関係物は嫌いじゃあないが、恋に敗れた一角には救済が必要だと」
「そ、そうですね……」
理論上では間違っているともおかしいとも思わないので、とりあえず同意をしておく。
だけど、そんな救済会長には必要無いだろう。可哀想以前に彼は恋に敗れてもいない。
また、第三者を巻き込んで何かやらかすつもりなのだろうか。前回のコンピ研の部長ならまだよかったが、会長となると、本気で怒らせたら口より先に拳が出てきそうだ。殴られるのは勘弁したい。
なんとなく胃の辺りがきりきりと痛み出した気がして、僕は制服の前を握り締めた。

「……それに、俺たちだけが幸せなのは申し訳ないしな」

……は?今、何と……
思わず目の前の彼の顔を見つめてしまう。
僕の視線に気づいたのか、彼が顔をしかめた。
俺たちだけが、幸せ。
確かに彼はそう言った。三角関係の末に、僕らが幸せになったんだと。
…………つ、つまり……
立ち上がって、僕らの間を阻む机の角を回り彼の近くへと移動した。
突然傍に寄ってきた僕を、彼が不思議そうに見上げる。僕は震える拳をぎゅっと握り締めた。
「そ、それは、告白の返事と受け取っても良いのでしょうかっ……!?」
彼が、少し目を見開いて僕を見つめる。
……もうこの瞳も僕のものなんだ。その頬も、唇も、首筋も、何もかも……!!
その唇が動き出す前に、僕は彼へと抱きついた。
「っ!?なにしやがる!!」
「……ぅっ!?」
しかし、次の瞬間首の喉仏へと鋭い手刀を食らい、僕は部室の床へと倒れこむ。
まさか急所を狙ってくるとは思っていなかった。






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