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以前の蕁麻疹やら転校やらの騒動から、数日が経った。
僕は9組の教室で、自分の席に座って、教科書を読み上げる教師の声を聞き流しながら、一人考える。

あの時の、彼のあの言葉は……告白のうちに入るのだろうか。
僕に側にいて欲しい、と言っていた。あそこまで言って僕を引き止めようとしたくらいだ、それなりの好意を持ってもらっていると判断していいだろう。
だけど、その好意とやらはどの程度のものなのか、判断に悩む。
三次元……彼は僕のおかげで三次元も見れるようになったと言っていた。三次元とは、現実の人間の事を表しているんだろうな。
手元にあったノートに、三次元萌え、なんて書いてみる。
つまり、一般的に言われるゲイの方々の絡みも好むようになったと言うことだろうか。でもガチすぎるのは嫌だと言っていたな……何だろう。
三次元萌え、ゲイ……筋肉隆々?いまいち彼の言う『ガチすぎる』のラインが分からない。
知っている単語をノートに書き連ねてみる。だがやはり分からない。
でも現実の人間でもいけるようになったと言うことは、彼自身もそれなりに許容範囲が広がったと理解していいんじゃないか。
だが、最近は廊下で会長とすれ違うたびに、眼鏡属性は無いが眼鏡攻めは良い、なんてよく分からない理論を語ってくれる。
じゃあ僕が眼鏡をかけたら色々させてくれるのかと聞いてみたら、普段から眼鏡じゃないやつが眼鏡をかけても意味が無いらしい。狙った感じが嫌なんだと。
会長だって伊達なのに。何で僕は駄目であいつは良いんだ。くそっ!
ぎゅっとシャーペンを握り締めて、ノートの上に書かれた単語の羅列を睨む。

「……古泉、何を書いているんだ」

頭上から声が降ってきた。
何かと思って顔を上げてみると、教師が顔を引きつらせながら、僕のノートを眺めていた。












何か変な勘違いをされてしまったかもしれないが、まぁあんな教師一人どうでもいい。

机を挟んだ僕の目の前で、彼は自分の手札を眺めている。出せる手札が無いらしく、少し顔をしかめて「…パス」と呟いた。
僕は自分の持っているカードの中から、スペードの10を机の上の、定められた場所に置く。これで次は彼にも出せる手札があるだろう。
彼は僕と机の上のカードを交互に見ながら、スペードのJを出した。それに続いて、僕もまた別の札を出す。
涼宮さん達のいない部室は、静まり返って閑散といている。僕と彼は一緒にいても、用事が無い限りあまり会話が無い。端から見たら、少し険悪な雰囲気にも見えてしまうかもしれないが、僕はこの無言の空間が苦痛では無い。むしろ、気を使う必要も無いので、楽だ。
無表情なままの彼を、ちらりと伺う。
僕はこの空間がとても好きだ。好意を持っている相手と、気楽に過ごせるこの時間が。
彼も同じ事を思ってくれていたら、嬉しいな……なんて。
「古泉」
突然、呟くようにぼそりと名前を呼ばれた。
心臓が大きく跳ねて、それまで頭の中を占めていた乙女染みた思考が一掃される。
「……はっ、ぃ、な、何ですか?」
微妙に舌ったらずな口調になってしまったが、彼はそんな事は気にもかけずに口を開いた。
少し視線を斜め下に向けて、言い辛そうに。
「……お前、さ。あれからどうなんだ?」
「どう、とは?」
それが何を差しているのか分からず、聞き返す。
すると彼はばつが悪そうにうーっと唸ったあと、顔を上げて正面から僕を見つめた。





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